内容説明
機械式時計の発明は世界を変えた。鉄道ダイヤが決められ利用者が増える。労働時間が固定され余暇を生み出す。時計がもたらした生活・社会の変化と、不定時法の和時計やゼンマイから電子装置に至る時計の歴史をたどる。
目次
シンデレラの時計
東洋への機械時計の伝来
「奥の細道」の時計
和時計をつくった人びと
江戸時代の暮らしと時間
ガリヴァの懐中時計―航海と時計
時計への憧れ―消費革命と産業革命
昼間の時間と夜の時間
時計の大衆化―スイス時計とアメリカ時計
機械時計の歴史の終わり―ウオッチの風俗化
補論 時間のパーソナル化と社会変化
著者等紹介
角山榮[ツノヤマサカエ]
1921年大阪市に生まれる。1945年京都帝国大学経済学部卒業。和歌山大学助教授・教授・学長、奈良産業大学教授、堺市博物館長を歴任。現在、和歌山大学名誉教授、経済学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポルターガイスト
3
10年以上前からずっと読みたいと思っていた本だった。うーん。もっと図版や統計の資料が充実していればなあとか,全体の構成が緊密になっていたらとか,どうしても思ってしまって,痒いところに手が届かない印象。散文的。けど一つ一つの論考は魅力的だし,何よりこの本が書かれた時点でこの分野に注目していたという先駆性が評価される本なのかなと思いました。2022/04/02
yuya
3
あまり時間から歴史を分析している本がなかったので面白かった、仕事と生活が同化している伝統社会から始まり、キリスト教と時間が結びつく、そして宗教改革により労働のイメージは変わり、それが今日の資本主義と結びついている、日本には外国のようなタイムイズマネー的な発想はなく、和時計という独自の文化があった、必ずしも勤勉と貧しさが結びつくわけではない、なぜ日本は貧しい中で経済成長できたのだろうか?2019/10/13
Pontmercy
3
支配層が時間を支配し始めたころから資本主義が始まったという関連性や、資本主義の発展が時計の発達といかに結び付いていたかを知った。ハイドンのある曲が時計と関係していたことも知れて思いもかけず嬉しかった。19世紀、フランスやオーストリア、イギリスなど娼婦の人数の多さや、日本は国が娼婦を認めていたり、時間で管理して辞められないように支配していた話なども、時計の話の中から発展した内容として読んでいるとリアル感が伝わって、問題点をえぐり出して見えた。2016/12/16
MrO
3
書かれたのが1984年。今から30年前。本書が、トフラーの「第三の波」の、「これからの世代の人々は、賃金を得るためだけの仕事に専念しなくてもいいだろう」という、明るい未来を語って終わているのが、印象的。しかしその後の世界は、この予想の方向には全く進まなかった。低賃金と、仕事と私生活の区別もないような多くの職場環境、それでも働ける場所があればましなほうという状況から抜け出すすべを見出せないでいる。希望を見出すとすれば、あとがきの後の増補で述べられている堺(自由都市の原型か)のグループスコーレの活動か。2015/05/01
wang
1
時計の進化により社会がどのように変わってきたのか。時代や国を変えてその変化を述べる。機械式時計が生まれてもしばらくは支配者や一部の金持ちが時計を独占してきた。一般市民は時間から離れ大雑把な時間感覚で生活してきた。日本でも江戸時代までは太陽が昇ると働き、陽が沈むと寝る。寺など公共施設が鳴らす時の鐘で1〜2時間程度の曖昧な時間を生きる。機械式時計が発明され個人が持つようになると、時間は神や支配者の者ではなく個人の物に。同時に時間に縛られるようになる。ハイドン時計交響曲はなぜ生まれたかなど話の導入が面白い。2022/12/08