内容説明
鎌倉幕府を打倒し新政推進をもくろむ後醍醐天皇。異なる立場から持明院統を擁立した足利尊氏。朝廷を二分した南北朝内乱を、人々はなぜ闘い、東国社会に何をもたらしたのか。地域の紛争を描き、『太平記』の時代に迫る。
目次
1 内乱の展開と東国社会
2 建武政権の崩壊と奥州・北陸
3 混沌とする東国社会
4 足利氏の分裂
5 足利基氏の東国経営
6 幕府・鎌倉府体制の整備
7 南北朝の合一
著者等紹介
櫻井彦[サクライヨシオ]
1964年、東京都に生まれる。1990年、早稲田大学文学研究科修士課程日本史学専攻修了。現在、宮内庁書陵部図書課文書研究官、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
13
35頁。中先代の乱の北条時行の敗北=足利尊氏の勝利という結果は武家政権の指導者としての北条氏の敗北=足利氏の勝利を決定づけたことに他ならない。そして敗れた時行が南朝方の一員として延命していかざるを得なかったことは武家政権の指導者の座から陥落したことを如実に示している。さらに皇族として軍事部門を掌握することに執心していた護良親王を亡き者にしたことも尊氏の立場を明確なものとすることになった。鎌倉幕府(=武家政権)の再興を目指した北条時行の計画は失敗に終わったが尊氏を中心とした武家政権の樹立を促す機会にはなった2023/11/23
翠埜もぐら
12
室町幕府の東国経営に翻弄される東国人は一族の生き残りのため正当性と後ろ盾を求めて右往左往するわけですが、これに自らの後継者争いが絡んで騒乱は長期化していきます。鎌倉公方と室町幕府との関係の変化には、鎌倉府成立時の南北朝内乱とその後の観応の擾乱が深く関与していて、この二つを多少なりとも理解したく手に取りました。上部権力の政治闘争に力を求めながら次第に地域的なつながりを強化し、これをもって上部権力そのものへの抵抗につながっていくなど時代の転換期であり、苦闘の時代でありました。織豊期なんかよりよっぽど胸熱です。2021/02/09
bapaksejahtera
11
建武体制の成立から義満による南北統合までの期間、坂東8カ国と伊豆甲斐の動向を中心に述べる。政治勢力が京都から九州まで激しく移動した畿内及び西国と比べ、東国では尊氏の親征によって薩埵山体制が確立し鎌倉府が再度成立するが、本巻では南北朝動乱も観応擾乱も自らの利権が第一とする根強い郡レベル東国在地勢力の記述が中心となる。しかしそれには史料的制約が大きく隔靴掻痒の感が否めぬ。その中で常陸での戦闘に窮乏の中で残した山内経之文書群や動員され膠着した戦況の中で宗教行事執行を理由に強行帰国する武士など印象的な記述も多い。2021/11/08
叛逆のくりぃむ
8
新田義貞について高い評價を與へてゐる。鎌倉退去については『輕率』と評價が辛いものの、新田本宗家が足利本宗家の從屬下にあつたことを考へると、鎌倉退去が其處まで輕率な行動であつたかどうかは疑問が殘る。2015/12/19
Mr.deep
4
逃げ上手の若君の歴史背景解説本として完璧。あの怪人たちが史実ではどんな活躍をしたのかが詳細に語られてます。 そんな与太というか斜めからの楽しみ方をしなくても、南北朝期の東国史としてかなりの力作。複雑怪奇な観応の擾乱の情勢がよく理解できます。2025/03/30
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