内容説明
一向一揆の最大の戦いとなった石山合戦。信長に惨憺たる敗北を喫した本願寺教団が、この合戦によりさらに発展する理由は何か。中世民衆の心をとらえた一向宗の謎と今まで解明されなかった石山合戦の本質に迫る。
目次
一向一揆は解体したか
一揆蜂起の背景
門徒の蜂起
大坂篭城
王法と仏法
『信長と石山合戦』を語る
著者等紹介
神田千里[カンダチサト]
1949年東京都に生まれる。1983年東京大学大学院博士課程単位取得退学。高知大学教授などを経て、東洋大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
16
石山戦争を詳述。信長との凄惨な対決により滅亡という悲劇的結末を迎えるという通説は物語である事がわかる。129頁。信長が、降参を許すか、降参を許さない「根切」を行うかは、相手の城主の顔を立てるか、潰すかの二通りの対応を使い分けたものとみる事ができる。戦乱の時代に、非戦闘員を虐殺したか否か、人道的であるか否かは問題ではない。戦乱の世を生きた民衆は、何よりも強い危機管理能力の高い領主を求めた。これが虐殺作戦の背景だ。虐殺によって、民衆が信長に怨恨をもつよりも、信長の虐殺を招いた領主が民衆から離れていくのである。2020/10/28
おらひらお
5
2008年初版。もとは1995年に刊行されたものの復刊です。信長と一向一揆との戦いでは殲滅作戦のイメージが強かったのですが、さまざまな殲滅作戦の事例を紹介し、それぞれ信長の政治的アピールも含まれてていたことが指摘されています。学術書は部数が少なく、値段も高いので、本屋からはすぐに消えてしまうイメージですが一定の評価を得ているものを、一般にも購入しやすい値段で復刊することは出版社としても重要な仕事だと思います。2014/12/18
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
2
守護大名から忌み嫌われまくった一向宗、教えに問題があるのではと思ったが、そうでもないらしい。法然や親鸞の教えはしごくまっとうなのに、忖度なのか虎の威借りちゃった系なのか、宗教を利用する坊主たちが…ということだろうか。一味同心、一味の安心、みんなで決めれば怖くないという一向宗の性質も暴力を加速したのかなあ。閣議決定、多数決…形を変えて暴力はなくならないのは因果だなあ。2019/08/02
silk
2
信長と一向一揆との戦いについて、主に一向一揆側の史料から検討している。信長が大量虐殺を行ったのは政治的アピールであり、決して一揆を殲滅するためだけではなかったと指摘するが、最終的な和睦を見てもうなずける。また和睦の条件に加賀国を本願寺に与え、国主とするという条件が入っていて、それが飲まれていたなど知らない事実もあり、興味深い。2013/06/06
史
1
ある意味として、一向宗が昇華するための戦いであったのかもしれないという結論は中々良い。2019/11/04