内容説明
独断の違勅調印、安政の大獄など、“独裁者”と評された大老井伊直弼。だが、実像はまったく違った。埋木舎から彦根藩主、そして桜田門外に斃れるまで、茶道から会得した、凛とした信条に生きた政治家の新たな個性に迫る。
目次
1 井伊家庶子としての成長
2 茶の湯観の形成と武士道観
3 世嗣としての江戸出府
4 政治意識の形成
5 彦根藩主井伊直弼
6 藩政改革と人材登用
7 溜詰大名としての意思決定
8 安政期の幕政と大老井伊直弼
9 大老直弼の政治展開
著者等紹介
母利美和[モリヨシカズ]
1958年兵庫県生まれ。1985年同志社大学大学院文学研究科博士前期課程修了。京都女子大学助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
9
井伊直弼の評伝。大老就任以降よりは、それ以前の部屋住み時代や世子から彦根藩主に至る時期を多く扱っている。養父との軋轢や江戸での大名同士の交流、そして茶の湯を通しての精神的な成長など、直弼の行動の背景を探っていくのが面白い。大老として独裁を行った印象が強いが、実際は老中評議・将軍伺いのルールを順守し、むしろ大老の専決権の無さに苦悩したりと正反対の実像に驚かされる。家格に対する拘りも含めて、なんとも真面目な人という印象で、茶の湯に対する真摯な姿勢もその表れなのだろう。2019/07/17
マイケル
0
2ヶ月弱かかって読了。井伊直弼に対するイメージはあまり良くない現状だが、彼は専制的な独裁者では決してなく、むしろ家臣の諫言を聞き入れ、政治の場では合議をもって進める、共和政的価値観を持った政治家といえるだろう。2019/10/06