内容説明
薩摩藩下級武士の家に生まれながら、のちに藩の重役となって討幕に邁進し、維新後は参議・内務卿として明治政府を率いた大久保利通。柔軟なリアリズムで政治を指導し、近代日本を創出しようとした激動の生涯を描く。
目次
1 大久保利通と幕末の薩摩藩
2 倒幕への道
3 明治新政権の誕生
4 欧米外遊
5 明治六年の政変と大久保利通
6 大久保政権の樹立
7 大久保政権の内政と外交
8 大久保政権の展開
9 大久保政治の終焉
著者等紹介
笠原英彦[カサハラヒデヒコ]
1956年東京都生まれ。1985年慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。慶応義塾大学法学部教授、法学博士
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
10
大久保の政治手法を「柔軟なリアリズム」と評しながら、その生涯を追う。幕末期より粘り腰の姿勢で周旋家として頭角を現したことや、新政府での伊藤博文を介しての木戸派の取り込みなど、政治家としての力量の高さに改めて驚かされる。また冷静な政治手腕に反比例するような維新の志士らしい理想主義の面も見られ、それらが「殖産興業」として結実する前に暗殺されたのは残念の一言。特に東北の開発計画を具体的に進めていたことは興味深い。2020/12/08
suimindukue
2
地元では西郷に比べ人気のない人物ではあるが、大久保の生き様の方が好きだ。この本では幕末も維新も一枚岩ではない薩摩藩や新政府において一心に働き誰より重きを為した彼の姿が書かれていてよい。2011/01/27
石野 真
0
大久保利通の人物像には「翔ぶが如く」以来興味があり、読み始めたが生涯を紹介するのに終始し、人物像にはたどり着かなかった。残念。2010/04/29
ぴーたーらびっと
0
明治以降の話は読むだけで疲れた。でも読んでよかった。極端な中央集権、急激な欧化政策のイメージがあった大久保政権だが実態は逆で、地方重視(特に東北開発)、民業の自主的な発達を促す政策、地に足の着いた日本のやり方に沿った近代化、立憲民主政治にも理解を示す。反面外交交渉では大国清に一歩も引かず完全勝利。遠大な目標については寛容かつ柔軟に、目前の政治案件には頑固に粘り強くという偉大な政治家。非業の死がつくづく惜しまれる。まるで大河小説を読み終えたかのような読後感。硬質で端正で、時折抒情性を滲ませる文体も◎。2022/07/18
バルジ
0
大久保のリアリズムに基づく冷静な政治観やそれに矛盾するような理想を追う姿が描かれていて良かった。 明治政府は朝敵藩の多い東北に「冷淡」だったと言われることがあるが、少なくとも大久保は東北を開発する事が国家の富強に繋がると考え、実際に計画を遂行していた側面を無視してはならないと思う。2018/05/20