内容説明
そしてついに、法律の壁は打ち破られた!障害者の薬剤師免許取得に制限を設けていた「欠格条項」。その撤廃運動の原動力として220万人以上の署名を集め、日本で初めて聴覚障害者で薬剤師となった女性が綴る感動の手記。
目次
第1章 法律の壁
第2章 聞こえない世界に生まれて
第3章 ダンナとの出会い
第4章 薬剤師への道
第5章 合格後の壁
第6章 薬剤師法の改正
あとがき わたしのこれからの道
著者等紹介
早瀬久美[ハヤセクミ]
1975年4月25日、先天性の聴覚障害を持って生まれる。薬剤師を志し、明治薬科大学に入学。卒業後、大正製薬株式会社に入社。また大学卒業と同時に薬剤師国家試験に合格するが、「耳の聞こえない者には免許を与えない」という薬剤師法の欠格条項により免許申請を却下される。その後、全国の障害者団体などの協力で欠格条項撤廃運動に尽力、220万人以上の署名を集めた。2001年7月、ついに法改正が行われ、ろう者として日本で初めて薬剤師免許を交付されて話題に。現在は仕事のかたわら、ボランティアでろう児たちのためのフリースクールで指導している
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感想・レビュー
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人間万事塞翁が馬
11
著者の早瀨久美さんは、デフリンピックの自転車競技で金メダルを取るトップアスリートでありながら、現役の薬剤師として活躍する方で、ワタクシは同じ年ということもあり、とても応援しております。 薬剤師の免許取得に「欠格条項」があり、聴覚障害者は免許交付を受けることができないという時代に、薬科大学を受験し、国家試験を突破、自ら欠格条項撤廃のために活動され、220万人もの署名を集める、、、スゴいです。尊敬です。 東京デフリンピックでの活躍も応援しています。2023/03/14
tomatobook
10
ろう者で初めて薬剤師免許を取得した著者。聡明で活発でガッツある。今まで聴者から見たろう文化の本は読んだことあったがろう者から見るそれとはやっぱり違う。付箋をつけたところ多数。中でもろう教育について。「聞こえる人と同じようになれ」という教育を受けて育った者は「耳が聞こえない」ことがずっとわからないまま。著者は手話と出会い本当の意味で聞こえない自分をはっきり受け止めて、それも含めて自分は自分だと感じた。ろう児は身近に将来をイメージするロールモデルがいない。大きくなったら聞こえるようになると思っている児もいる。2019/12/08
みっふぃー
10
ろう者として日本で初めて薬剤師免許を交付された人のおはなし。「ゆずり葉」という映画を見てろう者に薬剤師免許が交付されたのが2001年と知ってつい最近のことのようでびっくりして読んでみた。法律を変えるために周りの人の協力と本人の努力があり、周りの協力があるからこそ諦めることができなくなったり、時々つらくなった。読みにくいところもあったけど、ろう者のことを知るためにはとても勉強になると思う。2019/10/24
玻璃
7
日本国憲法で保障されている職業選択の自由が制限される場合がある。かつて聴覚障害者は薬剤師になれなかった。国家試験に合格しても、だ。子供の頃から憧れていた薬剤師になろうとする著者の活動は、壁を打ち壊すというより扉を叩き開けさせてきたという感じ。欠格条項撤廃運動という権利獲得闘争のイメージはあまりない。語り口の明るさもあるのかも。ノートテイク利用者としての経験談も私には興味深い内容だった。ろう学校で手話が禁止され聴覚口話法で教育されていた経験談はいつ聞いても胸が痛む。2018/05/25
ねこ
5
2001年の法改正により、ろう者として初めて薬剤師免許を取得した早瀬久美さんの自伝。国家試験に合格したのに、三年半も免許をもらえなかった理由は薬剤師法の欠格事項に「耳の聞こえない者」とあるから。法改正には厚生省vsろう者のような図式があるのだろうと思ったけれど、そうではなく、厚生省の内部にも見直しの動きがあり、ひとが動いたのだと知る。また薬剤師法のみならず、欠格事項撤廃の動きがあり、うまく重なったことも。本書には夫である憲太郎さんとのエピソードもふんだんに入っていて、にんまり。互いに惚れる関係、いいね。2022/09/04