出版社内容情報
信玄・謙信が数度にわたり対戦し、後世に「一騎打ち」などの伝説を残した川中島の戦い。その内実は、北信濃の覇権を賭けた10年以上におよぶ泥沼の勢力抗争だった。ぶつかり合う信玄の野心と謙信の縄張り意識、複雑に絡まる信濃武士の利害や東国大名間の対立構造。そして幕府将軍はどう対応したか。諸勢力の動向を複眼でとらえ、戦いの全貌に迫る。
内容説明
信玄・謙信が幾度も対戦し、数々の伝説を生んだ川中島の戦い。一〇年以上におよぶ北信濃をめぐる相剋は、在地武士や東国大名、幕府・朝廷をも巻き込み複雑に展開する。諸勢力の動向を複眼で追い、戦いの全貌に迫る。
目次
川中島の戦い―プロローグ
川中島の戦いをめぐる研究(二つの川中島;川中島の戦いは何度あったか?)
なぜこの地域で起こったか(信濃国「奥郡」;永正の乱と信濃「上郡」)
武田氏の信濃侵攻と小笠原氏(信濃守護小笠原氏;武田晴信の府中侵攻)
検証 天文二二・二四年の合戦(天文二二年の合戦;天文二四年の合戦)
検証 弘治三年・永禄四年の合戦(弘治三年の合戦;永禄四年の合戦)
その後の北信濃―エピローグ
著者等紹介
村石正行[ムライシマサユキ]
1971年、長野県に生まれる。現在、長野県立歴史館文献史料課長(学芸員・認証アーキビスト)、信州大学教育学部非常勤講師、博士(史学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
先行研究の整理や、一次史料の年代比定など、地味で硬派な内容の一冊。マクロな視点に重きを置き、足利-近衛体制にあった幕府と北信を巡る上杉・武田の争いの関わり、なかんずく幕府の影響力を頼った謙信と、あんまり重視していない信玄という対比は興味深い。また謙信が信濃の国衆の要請に応えたのではなく、もともと上杉のテリトリーであった北信濃に武田が侵攻した故の防衛的対応であったというのも、「義の武将」という謙信像を修正するところかと。5度(6度?)の戦いを通してみると、やはり信玄の方が戦略的に一枚上手かなと思う。2024/05/10
アメヲトコ
10
2024年3月刊。信玄と謙信の激突で名高いものの、虚像と実像が入り乱れる川中島の戦い。本書は史料を丁寧に再検討しつつ、マクロな視点から戦いとその背景を考察した一冊です。謙信の北越地方への領域意識、信玄の善光寺移転の意義、中央と地方をつなぐ近衛前久の位置など興味深い指摘が多々ありました。それにしても戦いに関する一次史料には年代記載がないものが多く、それら一つ一つをさまざまな手がかりから比定していくという地道な作業の積み重ねには頭が下がります。2024/05/24
オルレアンの聖たぬき
2
信玄と謙信にとっての『川中島の合戦』は、単に5回、いや6回以上の対陣、合戦を重ねて双方の人生を賭けて信州だけでなく周辺の大名や勢力を巻き込んで争われたものだったんだと。すごく壮大な歴史絵巻を解説付きで見たようなそんな感覚に襲われるような読書体験だった。2024/06/05
onepei
2
大きくマクロの視点から2024/03/31
転天堂
0
軍記物から現代にまで語り継がれる川中島の合戦。人口に膾炙し小説のだいざいとなり、ドラマや映画などで映像化されるとどうしてもそのイメージが強くなるが、実像はどのようなものであったのか。関東管領としての北信濃への領国意識を持つ謙信と、信濃国守護の名分で信濃一国の実効支配を確実にしたい信玄の対立を軸に、足利将軍家や一向宗・本願寺、信濃国衆や関東の北条氏の動向も絡めて立体的に浮かび上がらせている。2024/06/03