出版社内容情報
源頼朝の後を継いだ二代目鎌倉殿頼家。北条氏に実権を握られ、遊興に耽る「暗君」像が、近年見直されつつある。『吾妻鏡』を掘り下げ、文書史料も駆使して、比企氏をはじめ宿老や近習との関係、「十三人の合議制」の位置付け、訴訟対応、梶原景時の排斥、蹴鞠など、「失政」や「愚行」とされた挿話にも触れながら、頼家の実像とその時代に迫る。
内容説明
源頼朝の後を継いだ二代目鎌倉殿頼家。北条氏に実権を握られ、遊興に耽る「暗君」像が見直されつつある。近習と宿老、十三人の合議制、訴訟対応、蹴鞠など、「失政」「愚行」の挿話にも触れつつ、頼家とその時代に迫る。
目次
「暗君」の時代に切り込む―プロローグ
東国の「王」の後継者
頼家をとりまく人々
頼家政権を読み直す
騒動と世代交代
頼家をめぐる芸能と文化
政権の終末
血統を継ぐもの―エピローグ
著者等紹介
藤本頼人[フジモトヨリヒト]
1972年、東京都に生まれる。2004年、青山学院大学大学院博士後期課程修了。博士(歴史学)。現在、文部科学省初等中等教育局教科書調査官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
『吾妻鏡』等を見直し、「2代目鎌倉殿」源頼家の治世を再検証した一冊。手堅い論証が続く真面目な内容なのだが、結論が「明君とは言えないが、単純に暗君として片付けもできない」というもので、なんとも評価の難しいところ。父・頼朝の路線を継承する堅実路線だったはずなのだが…。やはり将軍就任すぐの急病で人事不省となったのが運の尽きか。次期将軍を巡る外戚同士の争いが勝手にヒートアップして、気付いたら梯子を外されていた。逆に病気さえなければ、子宝にも恵まれていたので、鎌倉幕府の歴史もだいぶ変わっていたのではと思う。2024/04/09
アメヲトコ
9
2023年6月刊。二代目の鎌倉殿となりながら、我儘で御家人からの人望を失い、将軍を辞めさせられた挙げ句に殺されたという散々なイメージの源頼家。『吾妻鏡』などによるそうした通説に対して、本書は『吾妻鏡』の徹底的な史料批判を行うことで、むしろ御家人たちに支えられながら彼なりに頼朝路線を継承しようとした姿を描きます。天候の記載の有無などから『吾妻鏡』の典拠史料の性格を読み解こうとする視角などは興味深いです。一方で頼家像が本書のように読み直せる場合、頼家発病後の展開があまりに急過ぎる感じもしないでもありません。2024/06/01
フランソワーズ
6
「人の愁、世の謗」を繰り返してきたとされる暗君頼家。その根源は『吾妻鏡』史観。北条氏関係者による”編集”を同時代の日記などから質そうという試みは、文言の一字一句にも疑義を呈する。その成果は、名君ではないが暗君でもなしという新たな頼家像を提示した。結局悲運の最期を遂げた頼家は、カリスマ頼朝の急死から始まる不安定な鎌倉幕府を持続させるためのスケープゴートになったということでしょうか。2024/05/06
うしうし
3
「(源)頼家の姿は、父頼朝の路線を継承して意欲的に取り組むという、従来の評価とは対照的な一面であり、「名君」とまでは言えなくとも、単純に「暗君」として片付けることができないという結論に至った」(p263)という。これは確かに従来までの頼家の歴史的評価とは異なる。ただ、坂井孝一氏や五味文彦氏が再検討した源実朝の歴史的な評価と比較すると、やはり頼家の人物像が、本書によって、向上したとまでは言えないことになる。そういう意味で、面白かったが、微妙な内容の本ではあった。2023/08/29
Jirgambi
2
実録ではお馴染みの、なんでもない天候記述が実は史料の同時代性を伝えるという指摘は、地味ながらも大事。2023/08/05