出版社内容情報
古代都城の中心であり、律令国家を象徴する巨大建築・大極殿。天武は天皇を頂点とする統治体制の重要な舞台として大極殿を創出しながら、王宮造営は未完に終わった。新王宮より前に大極殿を必要とした背景には何があったのか。小墾田宮から藤原宮まで王宮構造の変遷をたどり、飛鳥宮跡を新視点で再考。都城や陵墓から知られざる政治構想に迫る。
内容説明
古代都城の中心であり、律令国家を象徴する大極殿。天武は天皇中心の統治体制の重要な舞台として大極殿を創出しながら、王宮造営は未完に終わった。新王宮より前に大極殿を必要とした背景を探り、政治構想に迫る。
目次
都城研究・飛鳥宮の新しい視点―プロローグ
天武の王宮を探る
大極殿の創出
天皇の正統性
天武・持統の都城構想
大極殿のその後―エピローグ
著者等紹介
重見泰[シゲミヤスシ]
1977年、広島県に生まれる。2006年、奈良大学大学院文学研究科文化財史料学専攻博士後期課程単位取得後満期退学。現在、奈良県立橿原考古学研究所指導研究員、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
101
権力者は権威の象徴として、ある程度の立派な建築物が必要だ。中央集権の律令国家を目指した大化の改新以降の奈良時代は、天皇と朝廷の正統性を演出する舞台装置として巨大な大極殿が重視された。このため強いカリスマの天武帝は大極殿を必要としなかったが、それ以降に相次いだ女帝や幼帝が相次いだ時代には求められる逆転現象が起こった経緯を、都城遺跡発掘の検証から明らかにする。しかし天皇支配が確立した平安時代では不要とされ、焼失後は再建されなかった。政治的に求められ、政治的に消えていった建物から幼年期日本のあがきが見えてくる。2023/06/18
ムカルナス
12
朝堂院に参集した群臣に大極殿の天皇が唯一無二の存在であるという君臣秩序を視覚的に体現する装置が大極殿であるという。この構造は難波宮で一度創られるも大化の改新に対する臣下の反抗に合い成功しなかった。しかし壬申の乱で権力を得た簒奪政権である天武朝で再度試みられ天武崩御後の藤原京遷都、そして平城京遷都を経てようやく実現する。「大極殿の誕生」までに長い年月を要したのは やはり天武・持統王朝の強引とも言える専制政治に対する反発だったのだろうか?2023/08/23
ミネ吉
11
飛鳥~平安時代の王宮中の建物「大極殿」について解説された歴史読み物。思っていた以上に奥深かった。大極殿は、天武朝の飛鳥浄御原宮から出現し、平安末期ごろまで見られる殿舎で、天皇の即位をはじめとする重要な儀式が行われる場であった。現存しない飛鳥宮の発掘調査を元に、日本書紀などの文献資料と照らし合わせ、大極殿がどこにあったか、なぜ必要だったかといった点を探る。最新の考古学の成果から、従来の説を大きく見直ししているとのこと。理解が難しい箇所もあったが、概して一般向けで分かりやすく、知的好奇心を満たしてくれた。2023/10/12
アメヲトコ
9
2023年5月刊。天武天皇の飛鳥浄御原宮を中心に、古代の大極殿について論じた一冊です。発掘成果をもとに諸殿舎の同定を行っていくくだりなどが面白いです。それにしても飛鳥浄御原宮の大極殿は、宮の中心軸から外れた位置にあったり、脇側に門が開いていたり、大極殿前にあまり空間が設けられていなかったりと、これまで漠然とイメージしていた姿と違うのですね。2024/10/02
星乃
5
発掘関連の本は何冊か読んだことがあるが、柱や堀の寸法など数値の羅列ばかりで正直読みづらい本が多かった(自分の読解力のなさもあるが)。本書は図が豊富でわかりやすいく、著者の仮説も面白い。古くは塀の奥にある内殿から姿を一切見せない天皇に向かって、まるで神社に参拝するかのごとく奏上していたほど保守だったが、飛鳥浄御原では大極殿を建設することにより臣に対する上から目線を画策、平城宮大極殿の頃には唐の影響を受けはっきりと権威を見せつける方向へ。血統的には劣勢であった皇極、天武のプロデュース力は目を見張るものがある。2023/05/08
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