出版社内容情報
わずか10年の間に2度も仙台藩の存亡を揺るがした伊達騒動。3代藩主綱宗はなぜ強制隠居に追いこまれ、原田宗輔はなぜ刃傷事件に及んだか。新出史料を交えて事件の経緯を忠実に復元し、その真相を追究。当時の演劇や後代の文学作品に語られる、老中による藩乗っ取り陰謀説や原田宗輔忠臣説にも言及し、騒動論の変遷もふまえた全史の解明に挑む。
内容説明
仙台藩の存亡を二度も揺るがした伊達騒動。三代藩主綱宗の強制隠居や原田宗輔の刃傷沙汰など、新出史料を交え事件の真相に迫る。演劇や文学で語られる老中陰謀説や原田忠臣説にも言及、伊達騒動全史の解明に挑む。
目次
伊達騒動はなぜ起きたのか―プロローグ
一つめの伊達騒動
二つめの伊達騒動
村々の伊達騒動―仙台藩の野谷地と新田開発
歴史と文学の間―伊達騒動論の系譜
なぜ仙台藩は改易されなかったのか―エピローグ
著者等紹介
平川新[ヒラカワアラタ]
1950年、福岡県に生まれる。現在、東北大学名誉教授、宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
103
破綻時の悪影響が大きすぎて大手銀行は潰せないとされるが、江戸初期の伊達家はまさにそれだった。無能で無力な主君と勢力争いばかりの重臣揃いでガバナンス崩壊状態だが、改易となれば大量の浪人が発生し、他の大藩も幕府に不信を抱くなど政治的不安を招きかねない。なのに内輪揉めが続く状況に幕府も呆れ果て、何とか藩政を落ち着かせようと苦心していた。しかし私腹を肥やしていた原田宗輔は追いつめられ、逆切れして刃傷沙汰を起こしたのだ。酒井忠清という格好の悪役がいたため面白おかしく解釈されていった実態を、豊富な史料で論証していく。2023/02/06
ようはん
25
伊達騒動の最初の契機である伊達綱宗強制隠居事件は伊達兵部と老中酒井忠清の共謀という説はあるが、結局は綱宗が希代の放蕩殿様で周囲が我慢できないレベルであった。その後の伊達一門や家臣団の酷い対立振りを見れば綱宗を隠居させない方が共通の敵で纏まっていたのではとも思ったが、また別の意味で酷い状態になっていたか。2023/02/21
MUNEKAZ
16
歌舞伎や小説などで有名な御家騒動を検証した一冊。不品行の当主を押込め→幼君の就任に伴い後見役と奉行が権力闘争→藩のガバナンス大崩壊ということで、ダメになる組織の典型のような趣き。当主の交代が円滑に行われない、新当主が幼君で権力を行使できないというのは、武家の組織にとって致命的なことなのだなと改めて思う。他に後世での語られ方にも言及しており、原田甲斐を忠臣と見る論は戦前からあり、山本周五郎のオリジナルではないこと。当然だが『樅ノ木は残った』は史実ではなく、あくまで「小説」として評価すべきであるとしている。2022/11/17
金目
6
令和最新の史料から見る伊達騒動。老中酒井忠清と伊達宗勝が伊達藩62万石を乗っ取ろうとしていたという歌舞伎などの筋書きは無理があるし、原田宗輔忠臣説も根拠に乏しい。藩主不在状態の仙台藩で、一門同士我を張り合った結果、刃傷事件に及んでしまい、長く語り継がれることになった、ということかな。境争いに幕府巻き込んだ涌谷の宗重が一番あかんかったのでは。あと、こんだけ張り合う連中が一致団結して隠居に追い込んだ3代目の乱行て、相当だったんだろうなと忍ばれる2024/07/06
伊達者
5
地元の歴史に全く無知であることを反省させられた。大河ドラマや小説の樅ノ木は残ったのタイトルと原田甲斐の名前しかしか知らなかった。新聞広告でたまたま目にして買ってみたら面白く読めたし、伊達家の統治システムや幕府を含む統治機構や当時の情報伝達に至るまで色々学べて有益だった。騒動の全体像からその後の歌舞伎や小説等への影響に至るまで一通りのことを知ることができた。2022/12/12