出版社内容情報
海部・紀氏などの系図から政治的・社会的事由のもと行われた系譜の整備や系図編纂を読み解き、古代氏族の成立・展開の過程を描く。
内容説明
古代氏族と天皇家とのつながりを伝える系譜と、その内容を系線によって視覚的に表現した系図。海部氏・因支氏・紀氏の系図を手がかりに、古代氏族の成立・展開の過程を読み解く。各系図の写真・翻刻を掲載する。
目次
古代氏族と系図―プロローグ
『海部氏系図』を読み解く―海人の職掌を介した同祖系譜の形成(『海部氏系図』の成立;海部直氏の内部構造;海部直氏と尾張連氏)
『円珍俗姓系図』を読み解く―天皇に始まる二つの氏族の出自系譜(『円珍俗姓系図』の構成;『円珍俗姓系図』の成立過程;因支首氏と円珍の系譜意識)
『紀伊国造次第』を読み解く―宗教的権威としての国造とその継承(『紀伊国造次第』の史料性;紀直氏の内部構造;紀直氏の成立と展開)
歴史叙述としての系図―エピローグ
著者等紹介
鈴木正信[スズキマサノブ]
1977年、東京都に生まれる。2008年、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2012年、博士(文学)(早稲田大学)。現在、成城大学文芸学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
80
系図というものは、先祖との繋がりを以て、自己の社会的優越を図るもの…。と、言う理解を六点は持っていた。此処では古代豪族によって書かれた代表的な系図を読み解き、古代豪族の成立と展開を明らかにしている。「婚姻で大族と繋がったんで、無理くり先祖と子孫という事にしました」とか、「出家したけど、実家がもっと名族だったらいいなあ、と、思いました」とか、現在残された系図にも様々な思惑が有るのだなと、少しく、重い思いに沈んでしまった。人の飾りたがる熱意は、聖俗古今を問わぬのだろうなあ。2022/04/01
onepei
3
歴史と見栄が伝わってくる2022/04/08
takao
1
ふむ2025/02/16
転天堂
0
古代氏族の系図の形成について、現存する中では最古級の3つの氏族の系図の成り立ちを分析、考察している。系図そのものの真偽を問うのではなく、系図自体がその氏族の政治的地位や根源を示したものであるからには、その氏族の政治的状況などに応じて、祖先が架上されたり他の氏族と共通祖先をもって結合されたり、系図自体が可塑的な存在であることを認識する、ということは大変重要な視点である。そのことが、古代王権や豪族の政治的関係を分析するのに役立つであろう。2023/10/25