出版社内容情報
現在では常識とされる皇位の父子継承は、いつから、どのように行われたのか。天皇親政から摂関政治、院政へと移り変わる政治制度や、鎌倉幕府滅亡、南北朝内乱など、譲位や即位に武士が深く関わった事象を読み解き、皇位継承の実態に迫る。天皇と権力・親族との関係を軸に歴史の流れをとらえ、目まぐるしく展開した中世政治史を明快に描き出す。
内容説明
現在では常識の皇位の父子継承は、いつからどのように行われたのか。天皇親政から院政、鎌倉幕府滅亡、南北朝内乱まで、目まぐるしく展開した中世政治史を、天皇と権力・親族との関係を軸にとらえ、明快に描き出す。
目次
皇位継承を左右したもの―プロローグ
古代の皇位継承
皇位継承と院政
皇位継承と武士
皇統の分裂
南北朝内乱と皇位継承
権力から切り離された皇位継承―エピローグ
著者等紹介
佐伯智広[サエキトモヒロ]
1977年、大阪府に生まれる。2010年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、博士(人間・環境学)。現在、帝京大学文学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
10
南北朝の合一までの皇位継承をまとめた一冊。天皇が政治的なアクターとして意味を持っていた時代、皇位の継承というのは天皇自身の意思の他にも、摂関家や院、そして幕府の思惑が重なり合い、対立の火種にもなっていく。皮肉かもしれないけど、天皇や朝廷が政治的な力を失ったからこそ、今日にも繋がる父子継承の伝統が生まれたということがよくわかる。また不満なく譲位を成功させるには、政治的な安定が必要で、今回の生前退位の裏側にも、良くも悪くも政権が安定しているというのがあるのかなと思ってしまう。2019/04/29
アメヲトコ
8
平安時代から南北朝の合一までの皇位継承がいかなる論理で行われたのかについて分析した一冊。血統による系図では兄弟間の継承となっている事例にも政治上は直系と見なされる場合と皇統が変わる場合があるなど、なかなか複雑なのですね。鎌倉末期の両統迭立については幕府の藪蛇感が半端ない。2019/06/01
なおこっか
5
古代から中世までの皇位継承過程をすごーくわかりやすくまとめてある。すごーくわかりやすいので、何か参考書感ある。古代、まだ兄弟姉妹間で皇位継承してた頃は、ある程度年齢がいっていることが即位条件のひとつだったらしいというのが面白い。天皇家以外の政治損得がからみだして、女性を天皇家に嫁がせることが目的となって女性天皇は現れなくなり、白河院が院政を考えたことで若年であろうと直系男子であることが意味をもってくる、と。南北朝時代は単に平安期の分裂形のような気がするな。2020/07/21
バルジ
5
皇位継承に絞って中世日本の政治史を概観したものだが、皇位継承が齎す政治的混乱の数々は現代の象徴天皇制に慣れた我々にとって新鮮な感がある。両統迭立など皇統が別れたことによる政争、南北朝期の未曾有の混乱状況の中で徐々に安定した皇位の直系への継承される過程が面白い。皇位継承の混乱に巻き込まれ、強い政治的リーダーがいない状況では流石に強圧的な皇位継承策が取れない鎌倉幕府に、異能の天皇後醍醐という組み合わせは何とも言えない歴史の皮肉を感じた。2019/08/07
波 環
3
最近、中世の武士政権のふらふらした感じを解きほぐす書籍がよくあるが、これを皇位継承の側面から整理し直したもの。皇位を嗣ぐ人がたくさんいたらいたで、これもまた誰かに利用されたりしてたいへんなようです。2019/12/02