出版社内容情報
中世人は、すべての人間が宿業を背負っていると考えていた。仏教の世界観である六道は、三善道(天・人・修羅)と三悪道(餓鬼・畜生・地獄)とに分かれ、罪業である殺生にも善悪の違いがある。六道の中でも三悪道について、前世・現世・来世の三世という概念や、因果応報の歴史から中世人の思考を紐解き、知られざる中世仏教史の世界へといざなう。
内容説明
中世人は、すべての人間が宿業を背負っていると考えていた。仏教の世界観である六道は、三善道と三悪道とに別れ、殺生にも善悪の違いがあった。因果応報の歴史から中世人の思考を紐解き、知られざる中世仏教史を描く。
目次
六道の衆生―プロローグ
敵討ち
地獄からの脱出
畜生道の衆生
餓鬼の転生
三悪道の衆生―エピローグ
著者等紹介
生駒哲郎[イコマテツロウ]
1967年、東京都に生まれる。1998年、立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。東京大学史料編纂所図書部史料情報管理チーム非常勤・武蔵野大学教養教育リサーチセンター研究員・日本史史料研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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香菜子(かなこ・Kanako)
33
畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史:因果応報と悪道。生駒哲郎先生の著書。仏教の世界の三悪道である畜生・餓鬼・地獄の基本が理解できました。畜生、地獄、因果応報など仏教用語を基にした言葉や諺は現代日本でも数多く残っているから、その歴史や背景について学ぶことは価値があると思います。2018/09/28
テツ
22
六道のうち畜生道、餓鬼道、地獄道について。「そんなことをしていたら死んだ後にこんな目にあうぞ!」という脅しは衆生を救済するための方便。正しく生きていれば救われると心の底から信じることができるのなら、その救いを支えに幸福になれる。宗教とは本来人間を救うためのシステムであるし、酷い未来(死後も含めて)を提示するのも今生きている人間を救うために編み出された方法の一つ。昔の人が編み出したシステム、テクニックから学ぶことは多いですね。2020/02/24
Minoruno
6
中世人の仏教観を知りたくて手にした本書。「生きてくためには殺生をしなくちゃならない!武士だから戦わなくちゃいけない!殺生は地獄行き、わかってるけどそこんとこなんとかしたい!!なんとかできないものか!!」という強い「お気持ち」が深い信仰心による救済措置というセーフティネットを生み出したのだなと。地蔵菩薩の万能感がすごい(笑)2018/08/30
田中峰和
5
天道から人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道まで六道のうち、人間は人道の住人。輪廻転生の世界観では、人に生まれ変われるとは限らない。畜生や餓鬼に生まれ変わる恐怖を考えれば、往生して悟りの世界にいきたいと願う。六道の世界で生死をくり返すことから逃れ、解脱して極楽浄土に行き着きたいと願うのが中世仏教の基本。蛤を食すのが可哀想と買い取って、海に流した僧がいたが、蛤は喜ばない。早く死を迎え、上の段階に生まれ変わりたいからである。畜生にも段階があり蛤→犬→牛→馬→人へとステップアップしたいのだ。中世仏教は奥が深い。2018/02/28
Toska
3
道端で出会った犬猫が亡き父母の生まれ変わりかもしれない、というハードな世界観。他方、全てを「自助努力の賜物」と現世だけで完結させてしまう現代人と比べると、一種の逃げ道のようなものは残されていたのかもしれない。どれほど富貴を極めても、行いを慎まなければ来世は保証されない緊張感が、昔の大臣長者には確かにあったのだろうと思う。2021/03/01