内容説明
平和の続く江戸時代、戦功をあげる機会がなくなり「役人」として生きることになった武士たち。上司に取り入り出世を勝ち取る者、保身や人間関係に配慮する者など、したたかに生きようとした彼らの「働く思い」を読み解く。
目次
戦功をあげられない武士たちの働く思い―プロローグ
家臣の立ち位置
慎みとやる気
人事の要件
人と金
思いを記す家臣たち
武士の欲求膨張とコントロール―エピローグ
著者等紹介
高野信治[タカノノブハル]
1957年、佐賀県に生まれる。1985年、九州大学大学院文学研究科博士後期課程(史学専攻)単位取得退学。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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クサバナリスト
8
戦闘のない泰平の世の中。生まれながらに定まった身分制度、その中の武士階級の序列。家格により出世も限界があるなか、上に立つ者も下にいる者も、事務の運営、お家のためと制限的な中での苦悩がうかがわれる。2015/03/21
getsuki
5
泰平の世となり、役人として生きるようになった武士たち。その閉鎖された中でいかに働く意味を見出していくかが浮かび上がってきた。しかし、いつの時代も考える事はあまり変わらないなぁと思うなど。職場を思い浮かべながら読むと色々と心当たりが出てくるので思わず苦笑いしてしまった。2015/06/28
Great Eagle
4
さすが九大の先生の書いた本だね。江戸時代の太平の世が続く中、武士たちはサラリーマン化して、一所懸命というより出世や私欲も出てくる。家柄だけで役回りが決まることへの不満ややるせなさと、人の足を引っ張るなど、現代に通じるものがあることがよく分かった。2015/02/15
nekonekoaki
3
「御家」と、自らの「家」そして武士としての「私」の「誇り」は死守すべきもの。戦闘集団として武家の体裁を整えながらも、泰平の世の中で「役人」としての働きが主たる仕事になってしまったサムライたちの苦悩と涙ぐましいまでの生き残りにかける術を、大名の家臣の立場から紹介されている。ただ、生きづらい世の中にあっても、定められた身の上で自分らしくあろうと柔軟に振る舞う武士がいた話にホッとしました。2015年1月1日 第1刷発行。2021/05/23
アメヲトコ
2
泰平の時代が到来し、武士が役人化していくなかで、個々の武士の出世願望と、組織の安定とにどう折り合いが付けられてきたかという本。テーマがテーマだけに爽快感はまるでなく、諸藩の事例もあちこち飛んで、読んでいてややダレますが、それでも社会人が読むといろいろと身につまされるところがありそうな一冊です。2015/03/05