新潮文庫<br> ワインズバーグ・オハイオ (改版)

新潮文庫
ワインズバーグ・オハイオ (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 287p
  • 商品コード 9784102066010
  • NDC分類 933

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

高橋 橘苑

16
城山三郎氏のアメリカ紀行文に、本書を名作と評価していたので、興味を持ち手にする。読書中、しきりに色川武大の短編を思い浮かべる。冒頭の「グロテスクなものについての書」が、解説で云う様に作品全体を串刺しにしていて、運命に疑問を持ってしまった人達の、奇妙な情熱が描いている。城山さんは「孤独なアメリカ人」という形容を用いていたが、自分も一般的な解釈でなく、放浪と定着という背反する理想を追求する人々の物語として捉えてみたい。誰もが若い時に持つ、自分だけの真理を探そうとする情熱が、土着性に対抗して敗れた墓碑銘として。2015/08/20

Ecriture

12
工業化する都市に取り残された架空の町ワインズバーグはTony Tannerの_City of Words_の批評的枠組みを思わせるが、そのワインズバーグも50年前の村から発展して町になっている。人々はみな一風変わった癖や習慣・思想という「グロテスク」なものを抱えており(その意味において彼らは普遍的であり普通でもあるのだが)、孤独のうちに「理解」されることを待ち望んでいる。満たされぬ生活に変化を、冒険を求め、ある者はその町を飛び出し、またある者はその町へやってくる。人の弱さ・奇矯さ、それ故の美しさを描く。2012/04/29

びーとぅん

9
課題用。オハイオ州ワインズバーグという架空の町を舞台に、そこに住む人々のグロテスクな姿を描いた短編が20余編収録されています。一応主人公はいるので短編集ではあるんですが連作として一つの作品になっているもの。フォークナーが影響を受けた作家というのもうなずける重量感でした。誰もが持っているグロテスクな一面を極端なまでに肥大化させている住民たちの姿は、一見『普通』とはかけ離れているように思えるけれど、ものすごく胸に重くのしかかってくる。生きている限り誰もがこのグロテスクを抱えているんだろうなあ。2014/10/27

Koki Miyachi

8
20世紀初頭アメリカオハイオ州の架空の町ワインズバーグを舞台にした短編集。25編25人の人生の風景を描くことで、ワインズバーグという社会的な空間が浮かび上がる。会話文は一切使われておらず、客観的な視点から淡々と書かれたテキストからは、天から俯瞰した視点で見たかのように、町の素朴な雰囲気が感じられて味わい深い。ワインズバーグ形式ともいうべきユニークなスタイルと、穏やかで抑制が効いた文体が、当時の時代性を絶妙に醸し出しているのだろう。最後に列車で町を後にするくだり。ちょっと切なく愛しい読後感が秀逸だった。2013/05/02

あかつや

6
25編の短編のひとつひとつは特別素晴らしいってのもないんだけど、読んでいると頭の中で、ちょっと変わった人々が暮らす時代から取り残されたような田舎町、オハイオ州ワインズバーグが徐々に形成されていくような気がしてくる。そこはフォークナーのジェファソンやG・マルケスのマコンドのような小説の中にだけ存在する架空の町だが、例えば栃木県足利市とか岩手県花巻市みたいな、私が一度も訪れたことのない日本の土地よりもむしろ身近に感じられるから不思議なものである。行ってみたいなワインズバーグ。行ってもロクなことなさそうだけど。2019/01/13

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