内容説明
悲惨な結末に至ったアジア・太平洋戦争。国家のエリートだった海軍将校たちはなぜ無謀な戦争を実行したのか。「合理的」な決定を目指すも、結果的に犠牲を生んだ彼らの思考に迫り、現代にも通じる組織のあり方を考える。
目次
太平洋戦争にひそむパラドックス―プロローグ
海軍の内と外―海軍と政治(海軍の政治的特徴;日独伊三国同盟)
開戦―海軍のジレンマ(なぜ戦争は起きたのか;「帝国国策遂行要領」と海軍の意識構造;海軍のジレンマと第三次近衛内閣;東条内閣と海軍の開戦決意)
作戦―海軍の戦略・戦術構造(序盤の勝利と蹉跌;敗勢の中で)
終戦―海軍にとっての「政治」(東条内閣の倒閣;小磯内閣での決戦の模索;対ソ和平交渉;ポツダム宣言の受諾)
敗戦に何を学ぶか―エピローグ
著者等紹介
手嶋泰伸[テシマヤスノブ]
1983年、宮城県に生まれる。2006年、東北大学文学部卒業。2011年、東北大学大学院文学研究科博士課程後期修了。現在、福井工業高等専門学校一般科目教室助教、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nnpusnsn1945
49
日本海軍は良識派が多いと言われているが、問題点も少なくはなく、たとえ比較的合理主義でも限界もあった。例えば陸軍ほどでないにせよ、政治に介入したし、精神主義も後の特攻作戦を指導したように無縁ではない。著者は官僚制という面でも今に通ずる面があるという。糾弾調ではないが、丁寧な考察が積み重ねられた本であった。2022/10/16
バルジ
4
タイトルと内容が合っていない、著者の主張がやや強いクセがあるので好みが分かれるかもしれない一冊。海軍将校というより「海軍」という官僚組織と官僚性の特徴を視野に、海軍を通じて政軍関係の在り方を考察。政治に積極的な陸軍とは異なり官僚機構の規模から言って政治工作に費やす人的余裕もなく、あくまで官僚組織としての「執行責任」を重視する海軍の姿勢は興味深い、しかし明治憲法体制の権力分立構造の中で必ずしもその姿勢が評価出来ないのが難しいところ。明治憲法体制の政治統合機能の欠如というお馴染みの欠点が本書でも現れている。2019/10/28
ごいんきょ
3
太平洋戦争の海軍の行動に対する新たな視点からの解釈です。 軍人は官僚であり、官僚としての視点や行動原理から歴史を見直しています。 何処まで正しいのかは判りませんがこう言う見方もあるのだと目から鱗でした。2014/10/29
バッシー
2
非合理的に見える選択が当事者には合理的な選択だった。太平洋戦争中の海軍を例になぜ破滅にいたったのか、その根源が解き明かされる。官僚制の負の側面などは日本特有の現象なのかそれとも、世界でもみられる現象なのか気になった。2019/10/16
まいみ
2
著者がある一点の事柄に拘りすぎている印象があった。客観性を重視している割に、特定の軍人に対する主観によるアンチテーゼのようなものも感じられた。旧海軍はリアリストの集団でありながら、ある種の協調主義と抗うことができない相手と対峙した時、サイレントネイビーの悪い面が覗く。官僚機構としての海軍省の構造を改めて考える機会にはなった。2014/12/08