出版社内容情報
★第30回熊日出版文化賞受賞
内容説明
維新の功臣である西郷隆盛はなぜ蜂起したのか。七ヶ月余の内戦はその地域に住む人びとにとってどのような意味があったのか。熊本城での攻防を中心に、戦争に巻き込まれた民衆の実態を探り、西南戦争の大義を問い直す。
目次
西郷の大義と私学校軍(西南戦争の契機;薩軍の編制;熊本鎮台の篭城索;熊本城炎上;射界の清掃)
党薩諸隊の結成(学校党勢力と熊本隊;民権党による協同隊の編制)
政府の対応と官軍の編制(征討軍の編制;軍政機関と軍令機関;軍団と裁判所)
戦争と民衆(熊本城攻防戦;田原坂の激闘;山鹿の自治政;薩軍、敗走)
官軍における軍夫(軍夫募集;軍夫の軍属化;士族反乱と民衆―エピローグ)
著者等紹介
猪飼隆明[イカイタカアキ]
1944年、福井県に生まれる。1974年、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。現在、大阪大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
21
民衆からみた西南戦争や司法等知らない話だらけであり興味深く読めました。ただブツギリになっており内容には入り込めなかったです。2024/07/22
ようはん
20
民衆の立場から見た西南戦争がコンセプト。戦争は得てしてそういう物であるとはいえ、作戦の都合で家を焼かれる、強制的に兵士や軍夫に徴用されるとか一般民衆にとってはたまったものではない。戦闘に巻き込まれて死んだ少年の記述とか見ると双方の大義とは何なんだろうかという気持ちになる。2022/02/18
ジュンジュン
14
士族の最後にして最大の反乱、西南戦争を「民衆」から眺める。戦場の移動に伴って現地で強制的に徴用された人夫を重点的に。どの局面でも逃げる農民と追う官軍の構図は変わらない。農繁期を迎え、早く家に帰りたい農民にとって、はした金(かどうか分からないが)で命を懸けるなんてまっぴらごめん。士族の名誉?矜持?他でやってくれが本音だろう。ただ、同著「西郷隆盛」のようなストレートな内容を期待していたので、ちょっと残念。2022/07/13
金監禾重
6
西南戦争には自由民権主義グループが参加しており、占領地であった山鹿で自治政が行われたという。集会にて総代が選出され、薩軍らの後方支援を担った。ただ、引用資料を読むと、暴力で後方支援責任者の互選を強いられただけとしか読めない。それは自治だろうか(戦後の記録なのでバイアスがあるのかもしれないが)。2024/11/02
カール
2
西南戦争における家財の焼失等の戦火に伴う政府の補填や戦時中における薩摩側捕虜を裁いた戦時中の法廷。薩摩私学校や明治政府の両勢力。およびそれぞれの思惑で私学校側で参戦した植木学校や旧肥後細川藩の士族等の諸勢力の戦争目的や、戦地後方の兵站やその業務に従事した人足の募集と実態について書かれたものになる。戦史となると基本戦術や戦略。テクノロジーにばかり目が行きがちだが、戦争における大義名分や後方の人足が軍属へと変わっていく過程は中々興味深い。戦地における諸問題についてより深く掘り下げ、より知識を広げてくれる本だ。2019/06/10