内容説明
奈良時代、本当に天智天皇と天武天皇の子孫が対立し、天武系の皇統が皇位を独占していたのか。天智以前の王位継承から、壬申の乱、草壁皇統意識の誕生、桓武天皇の皇統継承方式までをたどり、奈良朝の政治史を読み直す。
目次
天武系皇統は実在したか―プロローグ
七世紀の王位継承(天智以前の王位継承;称制―天智の即位事情;壬申の乱―天武の即位事情;吉野行幸―持統の即位事情)
文武皇統意識の形成(文武天皇と「不改常典」;創出された天智の権威;「倭根子」から「天之真宗」へ;皇統の護持者たち)
聖武天皇の皇統再建計画(光明立后―聖武の立場と課題;天平の三姉妹―聖武の娘たちの婚姻;東国行幸―壬申の乱の回顧;遺詔―聖武の到達点)
草壁皇統意識の誕生(奈良麻呂の変―「皇嗣」をめぐる暗闘;淳仁の即位事情;押勝の乱―称徳即位の事情;道鏡擁立の構想とその挫折)
称徳から光仁・桓武へ(光仁の即位事情;桓武の即位事情)
皇統意識の転換―エピローグ
著者等紹介
遠山美都男[トオヤマミツオ]
1957年東京都に生まれる。1986年学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士後期課程中退。1997年博士(史学)学習院大学。現在、学習院大学・日本大学・立教大学、各非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パパ
2
飛鳥・奈良時代に天智系と天武系の皇統争いがあり、最終的には天智系が勝利を収めたというひと昔前の歴史観について疑問を呈したもの。 皇位継承の正当性を担保するルールは、その時代に自己の正当性を高める解釈を積み重ねて出来上がってきたことがよくわかる。2012/05/04
wang
2
天武系vs天智系の対立はなかったとの説。草壁・文武・聖武の正嫡を継承させようとした不改常典の精神説明は筋が通っている。が、持統ら女帝の主体性が強調される不比等・光明子・奈良麻呂らの意思が無視されているし、なぜ藤原一族が特別なのかがこの説では明らかでない。2009/07/16
瑞江 蕾羅
1
古代史の課題 2021/07/25
トラ吉
1
なかなか面白い本であった。しかし、ちょっと決めつけが多く感じられ、疑問も残った。最近の話題にもなったが、女系で皇統を維持するということががあったのであろうか?文武以降、藤原氏の流れなぜそこまで重要視したのか?皇統と散々言っておきながら、孝謙は、なぜ道鏡 を天皇にしようとしたのか?2010/01/24
reur
0
むしろ藤原不比等が皇統にこれほど影響力を死後も及ぼせた理由が天智天皇の血を引いていた(落胤だった)からという仮説に真実味を与えてくれる内容のような気がします。 天智の血統を不比等が継承しているからこそ藤原氏(不比等の家系)のみが天皇の母になる事を許されたんじゃないか?と考えると天皇の血統は考えられるより厳密に正統を貫いているのかも 2012/05/15