内容説明
戦後の日本文学は、満洲国崩壊のなかから始まった。戦前・戦中の「満洲」を舞台に、多くの文学者たちによって展開された「満洲文学」とは何だったのか。異郷の地での文学という窓を通して、「理念国家」の現実を描く。
目次
「五族協和」と満洲国―プロローグ
少年少女たちの満洲
日本人たちの満洲文学『満洲浪曼』と『作文』
「満洲人」による満洲文学
在満朝鮮人の満洲文学
白系露人の満洲文学
満洲国崩壊と流浪の「昭和文学」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
3
戦前から戦後にかけての文学の中での「満洲国」の位置付を考える本。フィクションであるが故に、かえってより深い部分まで描きだすことが出来るのだ。特に、リアルタイムの満洲にいた満人(中国人)、朝鮮人、白系ロシア人作家達の作品では、支配者である日本の国策に沿いつつも、「満洲国」の陰の部分(満人と朝鮮人の対立、日本人による搾取など)を暗喩を使って触れようとしていたのが興味深い。それに対し、日本人の作家の作品には、支配民族としての意識や支配した民族に対する恐怖心が透けて見えるものが多いのが、満洲国の実態を伝えている。2011/12/27