内容説明
二宮尊徳。江戸時代末期の農政家。幼名・通称は金次郎。小田原藩領の百姓の子に生まれ、没落した自家の再興後、武家の家政再建や下野国桜町領復興に尽力し、やがて小田原藩吏や幕吏に登用される。独自の「報徳」思想・仕法を編み出し、荒廃農村の復興―「興国安民」に捧げた生涯を描き出す。近代に形成された少年「二宮金次郎」像と報徳運動にも言及する。
目次
第1 誕生と時代・生活環境
第2 自家・総本家の没落と再興
第3 小田原城下での武家奉公と服部家仕法
第4 野州桜町への道程
第5 桜町領復興の苦難と成就
第6 思想の体系化と報徳思想の成立
第7 報徳仕法の広まりと幕吏就任
第8 領主階級との確執
第9 老いと死
第10 近代報得運動と少年「二宮金次郎」形象
著者等紹介
大藤修[オオトウオサム]
1948年山口県に生まれる。1975年東北大学大学院文学研究科博士課程中途退学。1994年東北大学より博士(文学)の学位取得。東北大学大学院文学研究科教授を経て、東北大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
11
お国のためにわが身を削って献身する孝子良民の模範として利用された金次郎少年だが、歴史的には農村の貨幣経済化に対して主体的に適応した近代的精神の持主であったらしい。積小到大のみならず米相場なども利用した開発金融スキームが報徳仕法の中心。道徳的な教訓も金融制度に必要な信頼形成のためだ。興味深いのは米金の無限の循環が生命をはびこらせるという思想が二宮にも見られる。カルヴァン主義のように革命思想には至らないが、幕府や藩の論理と報徳思想の論理の衝突があって、官側は報徳思想が民衆叛乱を正当化しかねないと危惧していた。2023/10/28
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