内容説明
王朝国家有数の碩学匡房は、最も漢詩に長じ和歌・朝儀にも通じた学者兼政治家ながら、その多面的な活動にもかかわらず評伝が多くない。本書は続々新出した彼の漢詩・願文・説話集などの古写本を巧みにとり入れるとともに、鴻需ながら仏・道の呪術に通じ、説話に深い関心を示した人間像に光をあて、歴史の中にいきいきと叙述した好伝記である。
目次
1 生れと血筋
2 少年時代
3 青春時代
4 東宮学士
5 蔵人匡房
6 美作守
7 左中弁
8 左大弁
9 江中納言
10 江都督
11 京都帰任
12 都督再任
13 江大府卿とその死
大江氏略系図
天皇家・村上源氏略系図
藤原氏略系図
略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ohe Hiroyuki
2
碩学とうたわれ、11世紀の我が国のブレーンであったともいえる同氏の評伝である▼11世紀は、今と大分社会の様相が異なるがゆえに、読んでもピンとこないところがある。イメージがつくのは元号をほぼ毎度考えていたことぐらいではないだろうか。▼やたらに仏教の話(願文を考える、病気になれば写経をする等)が出てくるのは11世紀らしい。▼文章(日記)にすること自体を嫌うところがあり、当時の日本の文化が垣間見える。▼自分の後を期待していた子が早逝してしまい、同世代が亡くなって落ち込んでいる姿も見える。そんなところは人間臭い。2024/01/13
NyanNyanShinji
0
平安時代の女流歌人赤染衛門の曾孫にして、鎌倉幕府の草創期重要文人の大江広元の曽祖父の大江匡房の伝記。東宮学士(皇太子の家庭教師)として東宮時代の後三条天皇、白河天皇、堀河天皇の三代の教育係として後、それぞれの天皇の践祚後のブレーンとして活躍、大宰権帥を2回務めるなどその71年の生涯は見事なものだった。漢詩や和歌、多くの願文などの純文学の作文に加えて、彼が語った説話を口述した『江談』と言った不可思議なものまで、彼の知識・興味の広さは時代を問わず現代においてもトップクラスかも知れない。凄い文人。2021/08/21