感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おMP夫人
7
「冷徹な性格」と、一言で片付けられがちな藤原頼長ですが、この本では、理想とする摂関政治の実現にむけて熱意を見せる、異彩の政治家であった彼の側面を知ることができます。多少ややこしいですが、2012年の大河ドラマを熱心にご覧になっている方ならばイメージしやすく、すんなりと読めるはずです。むしろ、そういう人にぜひ読んで欲しい一冊です。また、藤原頼長の名を一部で有名にしている彼の性的嗜好(ざっくりいうと、男色)については一切触れられていませんので、そちらを期待される方は別の書籍をあたるのが賢明かと思われます。2012/04/15
cineantlers
3
漢学に学び、政治を行いその苛烈さから「悪左府」と呼ばれた藤原頼長。しかしその内実を検証してみると漢学や先例の理に基づいたイメージとは違い頼長自身も感情から自由でなく、理や先例から離れた判断も散見される。頼長の考える理とは藤原道長のように天皇の外戚として権威を築き王家=藤原氏の政治に戻ろうとする復古主義的なものだったことは明らかである。しかし摂関家と王家が分離し、院政も完成された頼長の時代にそれは不可能な政治であった。理想はあっても自身では何も出来ない生涯通して少年期だった頼長の焦燥とはどんなものだったのか2022/08/25
ちはなゆ
1
摂関家に産まれ、強い個性を発揮した公卿の一生を丁寧に描いた伝記。保元の乱で敗れ亡くなるまで学問、政治に前のめりに活動した姿を、日記類から克明に書かれており、さすが碩学の仕事。とても人柄が難しいタイプの人物で、なかなか類書は現れないだろう。日記『台記』に散見される男色についてはふれていないが、これについては東野治之「日記にみる藤原頼長の男色関係」(『史料学遍歴』雄山閣、2017年)を併読すると平安貴族社会への理解が高まる。最後にさらりと書いてあるが、所領や年貢の増徴交渉の実態解明にも触れ、益多い一書。2021/09/14
まるちばく
1
かなり専門的な本なので不安いっぱいで読み始めたけれども大丈夫だった(ほっ)可愛がっていた猫のエピソードとか乳母の家族に対する気遣いとか、人間的な優しさが描かれててよかった。頼長さんの建てた「文蔵」は自分も是非欲しい(笑)。 しかし最初は師と仰いだ信西入道や後白河さんとの確執は…性格的には峻烈だけど基本お坊ちゃま生まれで理想主義で気遣いができなかっただけのなだけのかわいそうな人だったんだなあ。ってことは例の俳優さんはこれ以上ないくらいのはまり役かも。 2012/03/13
左近
0
藤原頼長の生い立ち、性格、そしてどのように政治を行い失脚したかが分かりやすく描かれている本。学問は好きだけど詩歌や音楽に興味を示さなかったというのは平安貴族のイメージと異なっていて意外だった。学問には熱心で頭も良いけれども人の心を読んで動かしていくのが下手、という性格は別の職業に就いたら成功したのかもしれないけれども、この時代と家庭環境からして無理だったのだろうなあ。予想に反して健全な本でした。2013/12/02
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