内容説明
池溝開発・布施屋設置などの社会事業に尽した行基がなぜ官から弾圧されたのか。藤原広嗣の乱や都うつりの動揺期に大仏が造られたのはなぜか。先に弾圧された彼が、再び官の起用を受け大仏造営に献身したのはなぜか。本書は奈良時代の政治史と行基の伝記との謎を解き、また大野寺の土塔の原形を明らかにし諸問題を解明した。
目次
第1 家系と氏族的環境
第2 民間伝道と池溝開発
第3 平城京造営と布施屋設置
第4 弾圧とその後
第5 恭仁京の造営
第6 紫香楽の大仏造営
第7 東大寺の建立
第8 四十九院と布施屋
追記 大野寺土塔について
略年譜
感想・レビュー
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moonanddai
10
行基の人となり、「伝道」の内容などを知りたかったのですが、その背景となる政治、経済情勢を続日本紀などの文書からたどるものでした。それでも行基の社会事業や菩薩とよばれたことからも、(個々人の精神的な救済というより)当時続いた飢饉、災害などからの「世の中」というか「境遇」というかそういったものの救済を説いていったのではないかと…、あくまで想像ですが…。にしても、教科書的にしか知らなかった当時の政争のすさまじさや、大仏建立のために墾田永世私財法が出されたという事情など、大変ためになりました。2018/12/05
壱萬弐仟縁
6
高校で日本史Aの授業を担当したとき、行基の師匠道昭などと共に取り上げた(24ページ)。池上先生のブログでも学ばせていただいた。「造船架橋の社会事業的活動には、船氏が船に関係していた技術が生かされていることに注目」(32ページ)とのこと。公共事業の原点を教えてくれる。木曾川が鵜沼川とか広野川といったようだ(42ページ)。R.21号のゴツゴツした岩肌のある辺り。布施屋は窮民救済(48ページ)。運脚夫や役民収容(50ページ)。光明皇后の施薬院(79ページ)。社会事業では窮民の安全保障が主眼となったら治安安定か。2013/02/23
ymazda1
1
歴史上の人物を史料まで還元して自分なりに再構築するのを助けてくれるって点で、このシリーズは貴重だと思ってる・・・彼の作った道場や院は、大乗仏教的なところに着地した定説は、なんかしっくりとこなくて、ひと昔前の建設業の飯場じゃないけど、もっと彼の行った土木に直結した施設だったんかなあって、なんとなく思った。
月照彦
1
行基の生き様を具体的に学び、行基の魂の叫びを感じたかったのだが、どちらかというと行基の生きた時代背景・社会背景を主に著してあり、物足りなさを感じてしまった。もともと資料も少なく仕方無いのかもしれないが。2013/10/01