内容説明
日本近代史学史の研究に早くから関心を寄せた著者は、伝統的な修史事業と新しく流入したヨーロッパ史学の発想とのきり結ぶところで、日本近代史学がいかに形成され、いかに確立されていったかを手堅い手法で実証する。その論ずるところは、たんなる史学史をこえた歴史観の分析にも及びそこにはもうひとつの明治史が浮き彫りにされる。
目次
1 日本歴史の歴史
2 明治史学成立の過程
3 明治時代における歴史理論の展開
4 明治初期における歴史学と社会学との交流―文明史と東京大学史学を中心として
5 ゆがめられた歴史
付載 津田左右吉―明治ナショナリズムの残映
6 島津家編修「皇朝世鑑」と明治初期の修史事業
7 重野博士の史学説について
8 川田剛博士の「外史弁誤」について
9 明治初期の歴史教科書と明治維新
10 明治憲法の制定過程と国体論―岩倉具視の『大政紀要』による側面観
付載 ゼルフィーの「史学」と岩倉具視―明治史学史の一遺聞
11 民友社の維新史論
12 王政復古史観と旧藩史観・藩閥史観
13 近世における歴史教育
14 明治時代における伝記の発達―日本伝記史の一齣