出版社内容情報
キリスト教の布教と密貿易とを防ぐために、江戸幕府は貿易相手のオランダに日本語の習得を禁じ、替わって日本側の通訳官〈阿蘭陀通詞〉の養成を急務とした。やり取りを担った彼らは、いかに異国の言葉を習得したのか。通訳をはじめ、貿易船の積荷や海外情報書類の翻訳、オランダ語での注文書作成、カピタンの江戸参府への同行など、苦闘する通詞の姿を追う。
内容説明
幕藩体制下、貿易国オランダとのやり取りをすべて担った日本側の通訳官“阿蘭陀通詞”。彼らはいかに異国の言葉を学んだのか。海外情報の翻訳、注文書作成、カピタンの江戸参府への同行など、苦闘する通詞の姿を追う。
目次
1 阿蘭陀通詞とオランダ語(実務が育てる語学;南蛮から紅毛へ、語学条件の大転換;阿蘭陀通詞の育成)
2 長崎の阿蘭陀通詞(通詞採用の任命と辞令;職階と役料;職務と加役;通詞会所と通詞部屋;異国船と通詞)
3 江戸の阿蘭陀通詞(江戸番通詞の参府御用;参府休年出府通詞の参府御用;天文台詰通詞の御用と私用;江戸からの出張通詞)
4 多才で多彩な阿蘭陀通詞(二十三名の通詞たち;二十三通詞に対する短評)
著者等紹介
片桐一男[カタギリカズオ]
1934年、新潟県に生まれる。1967年、法政大学大学院人文科学研究科日本史学専攻博士課程単位取得。現在、青山学院大学名誉教授、公益財団法人東洋文庫研究員、文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
57
#解説歌 阿蘭陀語通詞の仕事記録から貿易文化観点整理2016/05/15
壱萬参仟縁
37
史料豊富な本格的学術書。冒頭では単語帳の和蘭対照が述べられている。新井白石はイタリア人宣教師シドッチへ阿蘭陀通詞を通して尋問(91頁)。青木昆陽は、将軍の命で蘭人を宿所の長崎屋に訪れ、江戸番通詞を介して質問、蘭語を学んだ(92頁~)。天文台に蛮書和解御用の一局を設置、天文台詰の通詞を常駐(285頁)。志筑忠雄=中野柳圃が心血注いだのは、天文学・物理学、蘭語学、世界地理・歴史、数学・兵学・医学。『奇児全書』がある(316頁~)。2016/04/30
サトシ@朝練ファイト
20
実に楽しい本でした。ポルトガル人は日本語を覚え、オランダ人には日本語を教えず通訳官をおいた。当時の国策だったわけね。2022/07/30
ねね
17
一章は後にして、二章くらいから読んだ方がいっそ読みやすいかも。阿蘭陀語をどうやって学んだかの解説が延々続くんですが、結構きつかった…(英文学部卒の親は面白いって言ってたから、人に依るようですが)通詞とカピタンの手紙のやり取りが結構面白かった。でも、あまりのへりくだり様の割に、結構砂糖くれ、ペンくれ、と言いまくっていて、発展途上国で何かをせびる子供たちにも見えて来てだんだん哀しくなってきたり…(苦笑)凄く頑張って仕事はしてたというのはよく解ります。でも推量が多くて正直、うーん?って感じも…>続く。2016/05/17
クサバナリスト
14
通詞は、当然、武士それも幕府おかかえの身分だとばかり思っていたが、町人身分だったことにまずは驚いた。本書の資料には、通詞とオランダ人との関係が、単なる通訳者としての仕事上の関係だけにとどまっていない、人としての繋がりがみえて面白い。2016/05/07