出版社内容情報
都市の生活や社会をヴィジュアルに記録するものとして、広く利用されてきた『江戸名所図会』。しかし本当にリアルなのか。映像作品として構造的に読解し、製作者の意図と、背後に隠されていた江戸の実像をあぶり出す。
内容説明
私たちが目にすることが出来る史料の大部分が時の為政者か比較的規模の大きい経営体の残したものであり、ふつうに生きている人々が文書を残していることはきわめて稀である。当然、どれだけ記録性の高い史料であっても、行政や経営の必要から情報が選択され、無意識のバイパスがかかっているはずである。現象としての都市、すなわち日々の暮らしが紡ぎだしていく都市社会を捉えていくためには、それはいかにも一面的な見方のように思えた。図像を研究対象に選んだのはその限界を突破できないかという期待からである。製作者の意図と背後に隠されていた江戸の実像をあぶり出す。
目次
第1章 名所図会の到達と限界
第2章 江戸認識の逆転
第3章 江戸の都市景観構造と形成
第4章 都市江戸の空間認識
第5章 茅葺の場末をよむ
第6章 都市空間の人・いきもの
終章 ささやかな演出と二重の喪失
著者等紹介
千葉正樹[チバマサキ]
1956年宮城県に生れる。1981年早稲田大学政治経済学部卒業。商社勤務を経て、(有)まちのほこり研究室を設立、歴史民俗系博物館・資料館の展示設計に従事。1999年東北大学大学院国際文化研究科博士課程修了。現在、東北大学国際文化研究科助手。博士(国際文化)。主要論文に「享保期江戸火除地の利用と論理―馬場守忠兵衛の象飼い料一件から―」『比較都市史研究』16巻2号、1997年。「地域文化遺産の観光活用」『観光振興実務講座・地域を活かすソフト戦略』日本観光協会、1997年
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