内容説明
本書の主な内容である憲法第9条の解釈問題は、現実的には政府の解釈が最終的なものとなっている。憲法第9条の文言の現実の姿は、本書に紹介された政府の解釈によって描かれる。その絵姿について、概念論議であるとか神学論争といった批判が加えられることがある。そのようなレッテルやラベルをはがしてこそ、真実の姿が見えてくる。本書はそのための格好の材料を考える読者に提供する。
目次
序 政府の憲法解釈の意義
第1章 戦争の放棄
第2章 統治機構
第3章 基本的人権
第4章 憲法改正・その他
附 内閣法制局
著者等紹介
阪田雅裕[サカタマサヒロ]
1966年東京大学法学部卒業。同年大蔵省(現財務省)入省。1992年内閣法制局総務主幹・第一部参事官。2004年内閣法制局長官。2006年同退官。現在、弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
45
違憲立法審査権があるのに、憲法判断を避けてばかりの最高裁に代表される日本の司法の怠慢。その重い判断を戦後担ってきたのが内閣法制局。元長官の本著からは、そんな高級官僚の気概が感じられます。安倍政権の解釈改憲に真っ向から異論を唱えたのは著者でした。第1章の「戦争の放棄」は白眉。過去の政府は合理的な理由と説得力ある論理で「自衛隊は戦力にあたらない。個別的自衛権の行使を除き、武力行使は許されない」という9条解釈を確立させてきた事が分かります(それに比べて今回は‥‥)。「憲法と政治」の参考書にもぴったり。2017/04/19
coolflat
8
憲法解釈における政府答弁の収録と解説がなされている。なお本書の3分の1は、憲法9条や集団的自衛権の政府の憲法解釈である。政府の集団的自衛権における憲法解釈は、国際法上保有、憲法上行使できないというものだが、実は政府は憲法上保有しているかどうかを明らかにしていない。観念論だと。例えば、原子力基本法が禁じる原子力の軍事的利用をわが国が同法上「保有」しているかと問うのに等しいことだからだ。因みに政府が憲法解釈変更した唯一の例は、自衛官は昭和40年まで文民とされてきたが、その後は文民には当たらないとされたことだ。2014/03/17
だけど松本
1
作者のおしつけがましい個人論みたいなものが入ってないので、自分なりに考えながら読むことができるのがとてもよかった。これを読む限りでは急に戦争したがりの国みたいになっちゃったのは安陪キュンのせいなんだなあとあらためて思い、今度は彼に関する本を読んでみようと思った。憲法九条って、自分にはただ戦争はしないって言ってるだけに思えるのに、この言葉はどこにかかるのか、とか、これはダメとは書いてないからいいんだ、とか、自分らに都合のいいようにするためにいちいちシンプルなものを重箱の隅つつくようなことしてるように思えた。2017/09/10
レコバ
0
主に9条や統治機構に関わる立法や行政行為について、チクチクとした指摘とそれに対する応答が書かれている。”政府の”と題されている通り、専ら最高裁にて判断されている人権などの分野は手薄。2014/05/11