内容説明
変貌する“渋谷”と新たな「渋谷学」の構築。「渋谷」の特色を「にぎわい空間」と捉え、その「渋谷」を三つの視点から明らかにする。第一はにぎわい空間が形成されるに至った経緯という方向から、第二にはにぎわいを維持させている仕組み、第三として、にぎわいそのものを対象とする。以上、三つの視点に基づく論稿を各編としてまとめ、「にぎわい空間としての渋谷」を多面的に解明した。
目次
第1編 “にぎわい”空間の形成(宮邸と渋谷―梨本宮家を中心に;代々木練兵場の社会史;國學院と校地「渋谷」―大学の歴史と文教地区の形成;渋谷駅前の戦災復興―駅前広場・闇市・再開発)
第2編 “にぎわい”の背景、行政・衛生・防災(戦後渋谷区の総合計画―昭和四八年「渋谷区長期基本計画」を中心に;戦後の渋谷区における鼠駆除の変遷;渋谷の防災・減災と宗教文化)
第3編 “にぎわい”からみた祝祭空間(渋谷の花街と芸妓;渋谷の都市祭りと地域社会―神田祭との比較を交えて;イメージと現実の渋谷―外来者と生活者からみる渋谷の空間;SHIBUYAに聖地は似合わない―ポピュラーカルチャー「聖地巡礼」と渋谷)
著者等紹介
上山和雄[ウエヤマカズオ]
昭和21(1946)年生。國學院大學文学部教授・横浜開港資料館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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センケイ (線形)
2
近年になるにつれ東京の象徴のように描かれてきている渋谷、その喧噪の成り立ちが手厚く書き込まれている。都市都市しい議論を期待すると、意外と歴史的経緯のほうに紙幅が多いためやや面食らう。だが逆に言えば、まだ渋谷が町村であり、田園と高々一軒家に囲まれた駅だったころからの発展と箱庭ゲーム的欲望でその系譜をたどるなら、うってつけの一冊と言えるだろう。そこには寺社、練兵場、防災、高度経済成長の光と影といった日本固有の文脈が書き込まれる。そして今はやりである、渋谷がどこまでを指すのか?というイメージの幅のゆれが面白い。2018/05/31