内容説明
神から凶獣へ―オオカミ観の二重構造はいかにして生まれたか。伝承・文献のなかにオオカミのすがたを追い、日本人の生活のなかに息づいてきたニホンオオカミへの思いを浮彫りにする。
目次
第1部 篠原踊(口上に込めた祈り;シカ・イノシシ)
第2部 神から凶獣へ(原始時代;古代;秦氏と稲荷 ほか)
第3部 オオカミがいたころ(山の生活;見た人;根付け ほか)
著者等紹介
栗栖健[クリスタケシ]
1947年生まれ。広島県出身。早稲田大学法学部卒業。毎日新聞記者として滋賀県北部、丹後、山陰、奈良県吉野地方などで勤務。戦後の食糧難の記憶から農業に関心を持ち、自然条件の克服と協調の関係に目を向ける。30歳を過ぎた頃から野山の草木を見て歩き、植物相の遷移が動物の種類の変化、人間の営みとの関わりの変化を伴うことを知る。現在、毎日新聞社奈良支局五條通信部長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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寂しがり屋の狼さん
30
農民がその多くを占めていた時代、人と狼は良好な関係を築いていた。作物を荒らす害獣を駆除する狼は豊作の神と祭る土地もあった。しかし、海外との交流が深まると狼は悪とする西洋や中国の文献のイメージが知識人によって広まり、森林伐採や環境破壊と合わさって日本狼は絶滅する。私自身、本から学ぶことは多いですが、そこから得た知識も正しく理解して使わなければ、簡単にひとつの種を絶滅させてしまう🐾2020/10/16
AR読書記録
7
先日、国立博物館でニホンオオカミの剥製を見てきたので、ちょっと興味をもって。ちなみにその剥製で見る限りは、あんまり大きくもなくて(樺太犬のジロや秋田犬のハチ公の剥製のほうがよっぽど大きかった)、それほど獰猛そうにも見えなかった。でもやっぱり、人が喰い殺されるような被害も記録されているし、恐がられている存在ではあったのだな。ただし、正しい意味での「おくりオオカミ」は、そっと付いてきて、家に着くといなくなるという、ジェントルマンであったらしい。危険でもあり、でも田畑の害獣を退治してくれる存在でもあり。複雑。2015/06/24
saba
2
狼は害獣でも益獣でもあり、日本では恐れながらも御眷属=神の使いとして敬ってきた地がある。秩父の三峯信仰、天竜の山住信仰の範囲は実は凄く近接していて大興奮。境目は長野のどこかだな!山が隔てているように見えても、現代人が思うよりずっと人が行き交っていたのだ。信州~天竜川のあたり、面白くてはまりそう。2021/09/14