内容説明
「捏造事件」とは何だったのか―。その背景と経過、日本考古学協会による検証作業をたどり、10年を経た今日、あらためて日本前期旧石器研究の方向性を問い直す。
目次
プロローグ
発掘捏造の学史的背景
ルビコン河としての座散乱木第三次調査
馬場壇A遺跡以後の調査
小田静夫らによる批判
破綻を見せた前期旧石器の型式編年研究
捏造発覚前の風評と異義申し立て
毎日新聞による発掘捏造スクープ
疑惑遺跡の検証へ
東北日本の旧石器文化を語る会主催の会津シンポジウム
日本考古学協会による特別委員会の発足
藤村告白メモ
検証はどのようにおこなわれたのか
藤村コレクションの中味
巧妙な捏造の手口
捏造に使われた石器はどこから
共同研究者たちの記者会見
検証をふりかえって
捏造後、何が変わったか
再生に向けて―日本旧石器学会・アジア旧石器協会の設立
どこまでさかのぼる日本列島の人類史
エピローグ―未来志向の研究
著者等紹介
松藤和人[マツフジカズト]
1947年長崎県生まれ。1978年同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士課程中退。現在同志社大学文学部教授、大学院文学研究科博士後期課程任用教員、西北大学客員教授、中国科学院古脊椎動物古人類研究所客員研究員。博士(文化史学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
8
この捏造事件は、Fという特異な人物による単独犯行であり、他は被害者と思っていたが考えが変わった。後を絶たないFの新発見に浮かれる取り巻きの盲目ぶりはなんだ。疑義を唱える者に対して、耳を閉ざすどころか、お前に何が分かると馬鹿にする始末。F周囲の考古学者は、事件発覚までいい夢を見た。しかし、こんなに作為と想像力が入り込む余地がある学問って何だろう。文学に近いかな。2018/11/01
やま
4
捏造発覚10年後に書かれた本。個人の単純な思い付きではなく、さまざまな問題が内蔵された事件。あれから17年。当時のトップは鬼籍へ入った人も、中堅どころもベテランとなったのだろうが、日本の旧石器はどこへ進んでいるのだろう。気になるところです。2017/09/29
pepe
1
すでに20年前となった、神の手を妄信した考古学界による前期旧石器の検証作業。著者が関係者のためか、学閥の影響など、外からみるとわかりずらい部分もあるが、科学する者も人の子ということか。委員による解決の落としどころがあったという考えだが、関係者の責任も不問になっている状況では解決に至っていないのではないか。検証発掘に国の研究費を投入した経緯は初めて知った。未来永劫、検証作業に公費を投じた国の責任も問われるはず。2020/11/18
onepei
0
怒りの感情が見え隠れしていて、素直に読みづらい。2010/12/23
星野七生子
0
読みやすかったです。著者の立場は、発覚前はちょっと離れたところから怪しみ、発覚後は検証に尽力した研究者、というところでしょうか。わりと淡々と書かれていて、逆に何か言いたくて言えないことがいっぱいあるのでは?と勘ぐってしまいます。著者の予断を交えながら藤村の行状を描写する章が秀逸。これから今年出た捏造関連本を読み比べたい。2010/12/17