出版社内容情報
現代の学生には,すでに難読となりつつある明治時代の傑作文学を,原文に解りやすい解説をつけて紹介した近代文学のテキスト。自然主義文学の泰斗・田山花袋の『蜻蛉日記』を通して,作者道綱の母をとらえ,平安中期の女性像を描いた国文学愛好者向けの書。
内容説明
愛欲の苦悩に生涯をかけた田山花袋晩年の大作『道綱の母』を世に送る。晩年になって、子供がそれぞれ生長して、親の生き方を徹底的に批判するようになった時、そして、生長した子供に支えられた妻が次第に離反して行く時、花袋はひたすら、この女の愛にすがって生きて行こうとしたのである。その時、花袋は、自分の生き様を逆の立場におき変えて、あるいは、女の立場にすりかえて、当時の自分の苦悩を克明に書き記して行こうとしたのが、歴史小説『道綱の母』である。この花袋の『道綱の母』は、花袋が森鴎外らが自分の、もしくは時代の変り目に託した歴史小説への転換への志向と軌を一にしているものであり、歴史小説の6番目の大作と言ってもいいものなのである。