内容説明
人と自然の相互関係を守るはずだった世界遺産条約。「自然遺産」と「文化遺産」の分断が進み、単なる観光地ブランドになってしまったのはなぜか?その今を問い直し、未来を考える。
目次
第1章 世界遺産条約における自然と文化の関係
第2章 白神山地―狭められた価値と誇張された価値
第3章 屋久島―利用と保全の狭間。そして、島民文化の再発見
第4章 知床―世界的なモデルとしての自然遺産管理
第5章 小笠原諸島―外来種対策の実験場
第6章 奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島
第7章 富士山と紀伊山地―文化遺産にとっての自然とは?
最終章 ふたたび世界遺産条約を問い直す
著者等紹介
吉田正人[ヨシダマサヒト]
1956年千葉県生まれ。筑波大学大学院教授。千葉大学卒業後、日本自然保護協会研究員として世界遺産条約批准促進に関わり、小笠原諸島世界自然遺産科学委員会、富士山世界文化遺産学術委員会委員をつとめる。現在、筑波大学大学院世界遺産専攻吉田ゼミでは、世界遺産条約における自然と文化の関係を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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(k・o・n)b
5
主に自然遺産と文化の関係性にフォーカスした概説書。第7章に出てくる自然遺産に登録されることの弊害と廃仏毀釈のアナロジーが秀逸だと思った。「本来、自然と文化を一体のものとして保存する条約であった世界遺産条約が、世界遺産リストに登録するためのクライテリアを作った途端にそれに縛られて、自然と文化を切り離しているのは、これ(廃仏毀釈)に少し似てやしないか」2022/07/01
Kentaro
5
ダイジェスト版からの要約 青森県と秋田県の県境に広がる白神山地に、道路で分断されていないブナ林として、日本最大のブナ林が広がっている事が分かったのは、皮肉にも青森県西目屋村と秋田県八峰町を結ぶ全長30キロメートルの青秋林道が計画されたためである。日本政府が、1972年の採択から20年も経って1992年に世界遺産条約を批准した。自然保護運動の成果として守られた白神山地のブナ林を将来に渡って保護するには、国際的な保護地域制度で守る必要があるので、世界遺産条約に加盟し、白神山地を世界自然遺産の第1号にと考えた。2018/09/25
takao
2
ふむ2022/11/11
kayaki
1
本書は中村俊介著『世界遺産』(岩波新書)と併せて読むのがおススメ。この本は世界文化遺産を主に論じており、不足する世界自然遺産の情報は、本書を読むことで補完し合える。自然遺産を論じる本書が一番危惧するのは、「自然遺産」と「文化遺産」の専門家が分かれていることから、世界「複合遺産」への登録が進まなかったり、片方の価値ばかりが重視されてしまう世の中の傾向だ。「富士山」は文化遺産として登録されたが、自然遺産の価値は無いのか?そんなことは全くない。まずは自然と文化両方に理解を。だから2冊とも読まねばならない。2022/02/27
朝ですよね
0
自然遺産とその自然と関係の深い文化をどう保護すべきなのかという問題提起。主に、白神山地、屋久島、知床や小笠原諸島などの登録済自然遺産ごとに章立てされている。自然遺産としての価値紹介と世界遺産登録時の経緯、その土地に住む方の生活との関わりが紹介されている。2020/11/01
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