内容説明
マタギたちが経験した山での不思議な経験を、長年にわたって取材し、書き下ろした実話譚。
目次
第1章 歴史のはざまで
第2章 マタギ伝説
第3章 賢いクマ
第4章 山の神の祟り
第5章 不思議な自然
第6章 人間の不思議な話
著者等紹介
工藤隆雄[クドウタカオ]
1953年、青森市生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て、新聞・雑誌を舞台に執筆活動を展開。毎日児童小説優秀作品賞、盲導犬サーブ記念文学賞大賞等を受賞。日本大学芸術学部文芸学科講師(ノンフィクション論等)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
121
興味津々で怖さもあった一冊。東北、白神山地を舞台に語られるタイトル通りのマタギたちの奇談。初っ端の八甲田山中の真夜中の一列横隊の人影との遭遇話から興味津々。死んだふりをする熊、復讐しに来る熊の数々の逸話に自然の中で生きるものの賢さを感じ、その生きものたちを懐に抱く山の力を思わずにはいられない。数々のおきてをやぶったがための奇談はまさに山の怒り。怖さと共に山には神がいることを強く信じた。神を崇めるマタギの代々伝わる掟も納得。マタギの歴史文化は幕を閉じても、自然を山を畏怖する気持ちは永遠に喪われてはならない。2023/11/16
kinkin
97
北神山地でマタギとして生きてきた男たちから聞き取った奇談集。青森県で起きた有名な八甲田の遭難事故、映画や新田次郎の書いた本とは違う真実と不思議な話、青森の山中でアヘンの原料のケシが栽培されていたこと、マタギが体験したクマとの攻防や、クマたちの頭の良さ。全編通して山の神に対する敬意と不思議で奇妙な風習などどれも興味深く読むことができた。猟がうまくいく、いかないは山の神のご機嫌次第という。むやみな殺生はせず山を汚すようなことはしない。現在の日本人から薄れゆく思い出ではないかと感じた。図書館本 2024/11/06
マエダ
93
”マタギというのは、ただ獲物を獲るだけでなく、山の隅々までを知って大切にしている人のことをいうのです。”老マタギの言葉だが、読めば言い伝えや伝統が森を守ることに繋がっていることがわかる。なかなか知らない世界を学べてよかったと思う一冊。2016/10/30
ぶち
82
読友さんのレビューで手に取った本です。マタギたちが経験した不思議な経験を取材し、書き下ろした実話集です。写真も掲載されていて、"わー、実在する場所なんだ"と、臨場感に溢れています。読んで感じるのは、自然や野生に生きものに対しての人間の無力さ、奢りや迂闊さです。自然に対して敬意を払わない人間がたくさん登場し、悲惨な目にあっています。これがマタギたちが言う "山の神" からの罰だと納得してしまいます。単なる迷信、と軽く考えることはできません。深い山の幽谷に入って、その冷気に触れ、下山したような読後感でした。2023/12/31
HANA
68
山を駆けるマタギからの聞き語りの数々。冒頭の八甲田山行軍の怪談を含むもう一つの話は歴史の一断面として非常に興味深かったが、菅江真澄忍者説は正直どうかと思う。そして山の神等の伝説を巡る話や山の掟と祟り。山津波で村が消えた話等は、その様子から3・11を思い出して何とも言えない気分になる。また熊狩りからは熊の頭の良さを教えられるし、山中で遭遇した数々の体験は山が異界という事を改めて教えてくれる。国の政策によって滅びつつあるマタギの伝承と体験、その背後にある文化の豊饒さを、思い知らしてくれるような一冊であった。2017/03/24
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