内容説明
本書執筆の時点で、世界第2の高峰K2の女性登頂者はたったの5人しかいない。しかも、彼女たちの生きざまは、まったく違うものだった。共通しているのは女性であることと、全員8000メートル峰で亡くなっているということ。本書は、K2と女性登頂者のこの不思議な因縁に心を動かされた著者が、実際にK2に行き、精緻な取材を重ね、女性の視点から彼女たちのK2登頂にまつわる物語を描いたノンフィクションである。
目次
なぜK2なのか
K2の女性登山史
不屈のパイオニア
素晴らしい山頂
黒い夏
私たちの運命の山
「黒い夏」の終幕
パイオニアの死
もう一人の生還者
母親とクライマーとの狭間
一日の虎
封印された遺産
発見された英雄
情熱の代償
著者等紹介
ジョーダン,ジェニファー[ジョーダン,ジェニファー][Jordan,Jennifer]
1958年生まれ。作家、ジャーナリスト、ラジオ・テレビのニュースアンカー、ボイスタレントなどとして幅広く活躍する。2003年、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルの“Women of K2”の脚本・製作・プロデューサー。現在は、ソルトレイク・シティーでスカイライン・ベンチャー・プロダクションを共同経営
海津正彦[カイツマサヒコ]
1945年、八王子市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。翻訳家。学生時代から登山に親しみ、ヒマラヤ登頂の経験もある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ビブリッサ
12
山には人間の本性をむき出しにしてしまう力があるよう。嫉妬、欲、生きるための非情さ狡さ。それを本当の人間として受け入れられる人だけが山に登り続けられるんだろう。「人間は所詮ちっぽけ。でもちっぽけなりに命をかけて山に挑んでいくのは人間だけ。それが私だ!」と、諦めの向こう側に見出す燃え立つような決意。その尊さに気づかせてくれたのは山だ。「お前たちが見たがった真理を見せてやったぞ、見返りとして命を差し出せ」非情の頂は、要求してくる。 2016/04/09
katerinarosa
3
主人公の5人の女性は個性豊かで、行動力があり…といえば聞こえがいいが、かなり我の強い、身勝手とすら思える、癖のある人物ばかり。男の世界であった登山の世界に女性が入るためにはそうならざるを得ない部分もあったのかもしれないが、それにしてもちょっとと眉をひそめたくなってしまう。ただ、山を楽しんでいた彼女達が、ある時を境にしがらみやらスポンサーやら、自分以外のことで、縛られ、がんじがらめになっていく様には胸が痛くなる。結局は皆、山でなくなってしまうが、ある意味、山は彼女たちをそういったものから解放してあげたのかも2015/12/16
ケニオミ
3
K2。「地上で最も美しい頂、そして最も登頂を拒んでいる頂」といわれています。その頂に5人の女性が果敢に挑んだ際の記録です。山頂では掴まるものもなく、山頂で嵐に遭って吹き飛ばされた女性もいましたが、そのような悲惨な死もあるにも拘らず魅せられる頂なのでしょうね。2011/09/01
さえ
3
K2という名前は知っていたけど、この本を読むまで、そんなに登るのが危険な山だとは知らなかった。登場する5人の女性は、皆ばらばらの生い立ちで性格だったけど、どの人にも共感はできなかった。最初は山が好きで登っていた筈なのに、それが競争や名声、ビジネスへの手段に変わっていく姿が悲しい。2010/08/13
sei
2
エゴと金にまみれた5人の女性それぞれのK2登山の様子が描かれる。命がけの高山なのに道具を持ってこず性を売り物にして他人のテントを貸してもらったり、男性をこき使って道具を運ばせたり…。きちっと自立した女性登山家は一人もいなかった印象。すごく面白いんですけど、時々出てくるモノローグはおそらく本人たちの手記ではなく著者の創作なんだろうと思う。要らないな。2015/06/02