内容説明
隠ぺいし、ねつ造された「雪中行軍」の真相と真実とは―。最後の生き証人の声や残された関連資料の緻密な調査から浮かび上がった驚愕の新事実。
目次
第1章 現代の八甲田演習
第2章 遭難前史
第3章 行軍準備
第4章 行軍開始
第5章 彷徨する雪中行軍
第6章 捜索と救助
第7章 三十一聯隊の田代越え
第8章 山口少佐死因の謎
著者等紹介
伊藤薫[イトウカオル]
1958年、青森県生まれの元自衛官。2012年10月、3等陸佐で退官。青森の第5普通科連隊、青森地方連絡部などに勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
122
映画『八甲田山』が「小林桂樹が上官へのゴマすりで雪中行軍を考え、北大路欣也が粗雑な計画を策定し、三國連太郎が無能な指揮で行軍を混乱させ、士族出身の加山雄三が平民出の北大路を下に見て勝手に行動し、高倉健が住民に供応を強要したあげく案内人を虐待した」という内容の映画だったらどう受け取られたか。あの大量遭難死事故の真実を知ると、明治陸軍の無能ぶりに恐ろしくなる。しかも都合の悪い部分がすべて隠蔽されたのは、今日まで続く官僚組織の伝統か。大日本帝国とは日本人の命をちりあくたのように使い捨てねば存続できなかったのだ。2021/12/22
s-kozy
84
元自衛官があの八甲田山雪中行軍遭難事件の真実に切り込んだ力作ノンフィクション。著者は「無能な指揮官の命令によって、登山経験のない素人が準備不足のまま知らない山に登山をした」という虚しい結論に辿り着く。「結論ありき」の論理展開は些か乱暴にも感じたが、著者の熱は感じた。もう少し文章が読みやすいと面白い本になりそうだったのに…と惜しまれる点もあり。それにしても驚くのは責任がある者が行った事実の隠蔽や記録文書の改竄。日本では明治時代から行われていたのか。他山の石としなくてはなぁ。2019/01/15
鷺@みんさー
52
私も新田次郎の『八甲田山死の彷徨』をかつて読み、あまりの悲劇にやるせない怒りを感じた者だった。本作は青森生まれの元自衛官が、地元、内部から見たあの遭難事故について詳細に検証したもので、その真意は「過ちを繰り返してほしくない」につきる。東日本大震災で現地に行ったとき、彼は昭和8年の津波の慰霊碑を見た。甚大な死者が出ぬよう、後世に必死に伝えている碑と、実情。そして彼は、この本を完成させる決心をしたという。問題は天候ではない、というその主張を、丁寧に検証した秀作だった。2019/04/14
おかむら
50
「八甲田山死の彷徨」を読み直し、映画「八甲田山」を見直して、準備万端でコレを読む。著者は青森の元自衛官。膨大な参考文献の多さに気合が入ってます。そうかー、北大路欣也と高倉健の友情話は創作かー。ってか高倉健(の役)、実際は功名心が強くてしかもたかり屋体質って…。イメージがー…。真実だと映画にならんなー。事件後の報告書を上司が責任回避のため改ざんしてるってのも、さもありなんだけど昔から変わらないなー。雪中行軍から無断で抜け出して助かった兵士(映画の緒形拳)に対してやや苦言を述べてるのはいかにも自衛官らしいわ。2018/03/09
ジンベエ親分
49
新田次郎が「八甲田山死の彷徨」を執筆する際の元ネタとした小笠原弧酒の「吹雪の惨劇」が私家本(未出版)である以上、本書が史実としての八甲田山雪中行軍隊遭難事件を検証するための、最も重要な資料ということにはなるのだろう。ただこの本、生還者である小原元伍長の証言、第五連隊の始末書である「遭難始末」また当時の新聞記事など多数の資料を引用している点は貴重だが、感情的に過ぎ、ドキュメントを書く際の中立で冷静な視点に決定的に欠ける。津川連隊長、福島大尉、山口大佐憎しの解釈が多すぎ、結論は信頼性に乏しいと判断した。2019/02/23
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