内容説明
2018(平成30)年7月に発生した「西日本豪雨」は、全国で200人以上の死者を出した。被害が広がった要因はいくつかあるが、そのひとつに「逃げ遅れ」がある。避難率を見ると、たとえば広島県では、避難勧告・指示が最大で236万人に出されたが、このうち避難所への避難が確認されたのは1万7000人余り(0.8%)に留まった。人はなぜ逃げ遅れるのか。そして、いざというときに迅速に避難するにはどうすればいいのか。気鋭のノンフィクションライターによる渾身のドキュメントで被災現場をリアルに再現するとともに、災害心理学や気象学の専門家へのインタビューも収録。大災害時代のサバイバルに必須の一冊。
目次
序章 生活の消えた町
第1章 西日本豪雨の被災地を訪ねて
第2章 人はなぜ逃げ遅れるのか
第3章 生き延びるためにすべきこと
第4章 ポスト災害―町と人の再生に向けて
終章 人とのつながりを土台に
著者等紹介
谷山宏典[タニヤマヒロノリ]
1979年愛知県生まれ。明治大学文学部史学地理学科卒業。大学在学中に体育会山岳部に所属し、卒業後の2001年には明大隊の一員としてガッシャーブルム1峰(8068m)と同2峰(8035m)に登頂。その後、編集プロダクション勤務を経て、09年フリーのライターに。雑誌やウェブサイトでの記事執筆、単行本のブックライティングなど、幅広く活動する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
45
西日本豪雨から1年。生々しい証言をはじめ、人はなぜ逃げ遅れるかを検証。さらに生き延びるためにするべきことを明らかにしていく。ある範囲までの異常は異常だと感じずに正常の範囲内のものとして処理する「正常性バイアス」。避難行動を起こすか起こさないかを周囲に合せる「同調性バイアス」。これら災害心理学が興味深い。「人は逃げ遅れるのが当たり前」「全力で逃げる、必死で逃げる」「もうだめかもと思っても決してあきらめず生き抜く」が大事。豪雨災害は程度の差こそあれ、日本中のどこでも現在進行系で潜在。他人事と思ってはならない。2019/09/05
鯖
18
昨年の真備町の豪雨災害のレポ。奇しくも先週の台風の前後に読んでしまった。しかし薄々感じてはいたのだけれど、避難所って、地域の住民全員は物理的に収容できないよね。そもそも私の居住区域も川べりの、避難所自体がまっさきに水没するところにあるし。ノルマだから、でかめの公共の建物は問答無用で避難所にしてるだけという地域がほとんどだろうなと。これだけ災害が続くとある種の諦念があるのは確かだけど、せめて減災のため、自分にできることを考えるのであった。2019/10/20
栗羊羹
13
読みかけの本をとりあえず後回しにして、夢中になって読みました。2018年7月の西日本豪雨のドキュメントです。人はどうして逃げ遅れるのか…災害心理学の観点からすると『人間はなかなか動こうとしない動物』なのだとか。迅速な避難は稀なケース、逃げ遅れるのが当たり前と、ショッキングな記述。大雨台風の時は、自分から情報を取りにいかなくてはならない…高齢者、身体が不自由な方、事情があって子どもだけで留守番をしている家庭…いろいろクリアしなくてはならない問題もあります。2019/09/16
ふたば
7
大災害や起きたとき、我々は「想定外」「未曾有の」などと、あたかも考えられないような事態が起きたと考えがちだが、実際にはそうではなく、長いスパンで見れば同規模、いや、もっと大規模な災害がそこで起きているものだという事。災害が起きたときに、どのように行動するかは、地域や町でよく考えておく必要があるという事。繰り返し訓練し、常に手順や段取りを骨の髄までしみ込ませて置くことだ。まだ大丈夫、皆と同じにしていれば大丈夫などとは考えない事が肝要なのだ。オオカミ少年で良いのだ。危ないと思ったら、まず逃げることだ。2019/07/08
toriarii
3
お勧め、というか日本に住み続けるなら読んでおいて方がいい。序章は読み飛ばしても良いが、岡山及び広島の事例は必ず読むべき。当事者が語る事象から、自然災害への対策に絶対はないこと、水平避難の成功率を高めるためには詳細なテクニックや情報よりも、災害時にどう対処するべきかという覚悟を自分自身や家族で考え、動けるように備えておくことが重要であることを教えてくれている。災害時の避難も重要だが、災害後も死者が発生しているという指摘にはハッとさせられる。2019/07/22