内容説明
宮澤賢治のおはなしには、自然を見る視点の魅力が詰まっている。木の芽の宝石、春の速さを見る、醜い生きものはいない、風の指を見る、過去へ旅する…。こんなふうに自然を感じとってみたいと思わせる、宮澤賢治の57のことばをやさしく丁寧に紐とく。
目次
1 立ち止まってみる―そばにある感動を見つける
2 感動するこころと向き合って―発見を言葉にする
3 新たな発見に出会う―視野を広げて
4 つまらないものはない―先入観を捨ててみる
5 暮らしとともにある自然―よりよく自然とつき合う
6 自然を見つめるこころ―幸せを願う
著者等紹介
澤口たまみ[サワグチタマミ]
エッセイスト・絵本作家。1960年、岩手県盛岡市生まれ。1990年『虫のつぶやき聞こえたよ』(白水社)で日本エッセイストクラブ賞、2017年『わたしのこねこ』(絵・あずみ虫、福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。主に福音館書店でかがく絵本のテキストを手がける。宮澤賢治の後輩として、その作品を読み解くことを続けており、エッセイに『新版 宮澤賢治 愛のうた』(夕書房)などがある。賢治作品をはじめとする文学を音楽家の演奏とともに朗読する活動を行い、CDを自主制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
127
著者は岩手県在住のエッセイスト・絵本作家。宮沢賢治の言葉を、ご自身で撮影した自然の写真にエッセイを添えて紹介している。二十年間賢治の自然のことばを追いかけて、賢治と同じ高校・大学の卒業生として、彼の言葉を味わい、憶測し、体験して、楽しんでいるだけではなく、およそ100年以上前に、「環世界」という考えに至る未来派の洞察までも指摘している。妹のトシの死を記したとされる『春と修羅』に、実らなかったヤスさんとの恋がこの本に忍ばせているとエピローグにあります。「銀河鉄道の父」では触れられていない恋のエピソード。2023/05/22
けんとまん1007
53
その人が使う言葉、話し方から、わかるものはとても大きなものがある・・と、思っている。一つのことを表すにおいても、選ぶ言葉・使い方・文脈、声の大きさ・抑揚で、時によっては全く違う意味にもなりえるし、受け取り方も違ってくる。そんな言葉を磨くには、やはり、日々の暮らしの中で屋外での時間・場のありかたが大きな意味を持つ。そんなことを考えた。2025/02/19
ぶんこ
45
岩手在住で、宮澤賢治を愛してやまない著者が、賢治の残した言葉を、素敵な写真と著者の言葉で解説しています。写真も優しくて、読んでいるとほんわかしてきました。最初の木の芽の写真が実に可愛くて、賢治がこよなく愛した「からまつの芽」。ピコット編みのレースのようと評する著者も素晴らしい。次ページの雲の素敵で、どんどん次ページもとなっていきます。最後に賢治が恋をしていたとの解釈。自費出版をした「春と修羅」の中の、韻を踏む言葉に隠された切なる思い。著者の賢治への愛なくては発見できなかったと思います。2023/12/18
わっふる
7
宮沢賢治の本の中で「銀河鉄道の夜」は別格として「水仙月の四日」が一番好きなのだが、心から離れないのは「土神ときつね」だ。あの掻きむしるような苦しい心はどこから来るのだ?と考えていたら、この本に解答があった。私は、その為だけにこの本を手にしたのではないかと思えるほどだ。写真や詳しい解説のお陰で散歩がますます楽しくなりそうです。今丁度シロツメクサの季節。ポラーノ広場を探しに行ってきます。2023/06/06
おにぎりまる
5
宮沢賢治の言葉の抜粋に、エッセイがついている。宮沢賢治の言葉自体もとても素敵なのだけど、エッセイがあることでその言葉の風景がより見えるようになる。本を読むのも良いけど、私も外に出てゆっくり自然と触れ合う時間をつくろうと思える一冊。良書。2023/08/26