内容説明
ニホンオオカミの最後は、じつははっきりしていない。明治38年の和歌山県が最後といわれるが、それは標本として残されている最後のオオカミでしかない。東北の地で、野生動物と人の関係を追いかけた作家が、オオカミの最後を追う。「狼酒」や「狼祭り」の発見、貴重な歴史的資料。東北の地で明治・大正を生き、オオカミの最後を見てきた山の民の最後の遺言を集め、藩政の書面をたどりながらニホンオオカミの最後に迫る。
目次
狼酒の発見
狼の民俗
ニホンオオカミの正体
狼の生態
江戸時代の狼
荒れる狼
明治九年、狼の子を天覧
狼の首に賞金
売り物になった狼
狼狩りの証言
恐るべき攻撃力
いたましい最後
狼の形見
著者等紹介
遠藤公男[エンドウキミオ]
1933年、岩手県一関市生まれ。一関第一高等学校卒業後、主に岩手県山間部の分校に教師として勤めるかたわら、コウモリ(岩手)とノネズミ(北海道)の新種を発見。1973年に『原生林のコウモリ』(学習研究社)を刊行。1975年に退職して作家生活に入り、翌年『帰らぬオオワシ』(偕成社)で日本児童文学者協会新人賞・ジュニアノンフィクション文学賞、1983年『ツグミたちの荒野』(講談社)で日本児童文芸家協会賞、2000年に日本鳥類保護連盟総裁賞、2017年に日本哺乳類学会功労賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
28
いやぁ、面白いのなんの。狼たちが、身近な危険生物として、人間たちの暮らしの中に当たり前に存在していたということを知ることができる。2022/11/03
はる
10
狼(オイノ)は私には、全くのファタジーかユーラシア或いはアメリカ大陸の映像の中の動物。それだけに東北岩手に残る集落の獲狼記録は驚きだった。記録が残るにもかかわらず、その骨や剥製の僅少さにニホンオオカミの絶滅してゆく姿が哀しく思える。地方の旅館に泊まり、玄関に入り框を踏めば、眼の前に熊や鹿、貂等の剥製は珍しくないのに。関東西部の山の社を訪ねると、オオカミの狛犬が守護している。里に下ると獅子になる。この本でも古来より東北の人たちが秩父三峯山のオオカミの護符を受け、オオカミ禍の祈念をしたことが書かれていた。2023/06/07
maqiso
4
狼にまつわる伝承や信仰が残っていた。盛岡藩は馬や人を襲う狼を狩った。明治になると県が報奨金を出すようになり、狼の捕獲届も見つかった。捕獲者の子孫を探しても報奨金をもらったという話は聞けなかった。狼は徐々に減り、野犬が増えていったようだ。2024/03/01
つくし
2
フィールドワークがすごい。著者の熱意が伝わる一冊でした。文献をたどるだけではなく、正に追い求められたニホンオオカミの最後。各家に伝わるものが失われていくのは道理だけれど、こんなにも痕跡が残らないとなると博物館や文書館の重要性が浮き彫りになる。オオカミの場合は、記録が残されないほど当たり前に存在していたのか…気付いたら姿を消していたという虚しさ。2023/01/25
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