内容説明
明治、大正、昭和を通じて、風景画の第一人者として活躍し、独自の木版画で、現在も国内外の多くの愛好家を魅了する吉田博の唯一の山の画文集を復刻。高山の美の捉え方を説き、当時の登山の様子やアメリカ、ヨーロッパ、ヒマラヤの旅、山の心得まで、本格的な登山家としての姿、高山の美を愛し続けた画家の姿が浮かび上がる。「日本アルプス十二題」ほか多数の作品を収めた。
目次
日本篇(高山美の感得;展望美・裾野美;断崖美及び湖水;高原美・動植物;山巓美 ほか)
外国篇(ロッキー;アルプス;ヒマラヤ)
著者等紹介
吉田博[ヨシダヒロシ]
1876年、久留米に生まれる。1894年、上京し不同舎に入門、後に明治美術会の会員となる。1899年、渡米し、デトロイト美術館、ボストン美術館などで展覧会が成功を収める。以後、数度にわたって渡米、渡欧し、世界各地で水彩・油彩画が評価される。1902年、太平洋画会を結成し、文展・帝展をはじめ、明治、大正、昭和にかけて風景画家の第一人者として活躍した。また、1898年、日本アルプスの探検的登山の時代から登山を続け、ロッキー山脈、ヨーロッパ・アルプス、ヒマラヤなど世界の山岳も訪れ、多数の山岳画を残す。1936年、日本山岳画協会を結成。大正後期からは独自の木版画を制作し、国内外の愛好家を魅了し続けている。1950年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ27@シンプル
54
恥ずかしながら 作者を初めて知った。20C 前半の活躍となれば 装備や山へのアクセスは、今の登山とは甚だしく内容が異なっていよう。それだけに作中登場する嘉門次・喜作・品衛門の話が面白い。8割余は国内、残りはロッキー山脈・アルプス・ヒマラヤ等海外を綴る。光と音の画家と言われるだけあり 文庫本でも彼の作品の素晴らしさを偲ぶことが出来たのは嬉しい限り。複数回訪れたり、1ヵ月滞在するなど私には望むべくもない上に 縦走や沢歩き、稜線、岩場伝いのエピソードは驚愕するばかり。ガイドを激賞、山容も随一と言葉を弄さんばかり2022/12/08
booklight
30
画家、版画家の吉田博が山を語る。山はあくまでその美を感得するために登るのであって、運動本位、優越感、冒険心のために登るのではない。美を感受できるなら、なにも登らなくてもいいと言う。大正昭和にかけて毎年夏に日本アルプスを縦断する山の絵の大家がいうので説得力がある。高山美、展望美、裾野美、断崖美、高原美、山巓美と色々な美を語る。そういう視点で山を見ると変な焦燥がなくなる。好きなように登ればいいんだ。地元の案内人を山の先輩として紹介しているのも、縫い合わせた毛皮の寝袋を持っていく古いスタイルの登山も好ましい。2022/11/05
あきひと
5
昭和6年発刊の紀行文が底本。画家である著者は、美の対象として山を観て、山に入って風景画を描いた。北アルプスに多く行っていて、常に山案内人を伴っているのだが、それが小林喜作や上條嘉門次というビッグネームなので驚きました。著者のことは知らなくてごめんなさいです。2023/05/29
美幸
5
山を愛する気持ちの丈が高い事がよくわかること!2021/11/29
黎
4
吉田博の絵が好きで、もっと知りたいと思い図書館にて借りる。高山の素晴らしさ、吉田博の高山への愛を知ることができる。こんな風に山に登り、絵を描き生きていく人生なんて豊かなんだろうと思う。山を登ることを目的とせず、山の美しさを見ること(そして絵を描くこと)を目的とする登山が良いらしい。表紙の山の絵はもちろんのこと、カラーで載っている絵画の数々も美しい。2022/07/17