内容説明
―私は、明治四十四年より今日に至るまでほとんど一生を、未開の森林渓谷を探して、狩猟と釣りに費やしたようなもので、最早人生の終着駅にあり気息奄奄たる老爺となってしまった。この本にあるものは大正から昭和にかけての若き時代の思い出の昔話である。猟銃を携え北海道の山野を駆けめぐった西村武重が1971年に上梓した代表作を文庫化。
目次
ヒグマとの戦い―その1
カクレ原野とガンピ原
アイヌの狩猟
ヒグマとの戦い―その2 千島エトロフ島のヒグマ
尾岱沼と野付岬
養老牛温泉を中心として
著者等紹介
西村武重[ニシムラタケシゲ]
1892(明治25)年2月、香川県綾歌郡造田村(現まんのう町)生まれ。1896(明治29)年、4歳で北海道札幌市篠路に父と移住。1916(大正5)年、養老牛温泉踏破。永年ヒグマ撃ちを経験してきた。1972(昭和47)年、勲六等単光旭日章授与。1983(昭和58)年、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
93
このあいだ読んだ『北海の狩猟者』を描いた著者によるヒグマとの対決が描かれている。対象から昭和にかけて北海道で各地を歩きヒグマと対決する話は冒険譚としても非常に面白かった。途中アイヌのヒグマ寮のことやアイヌの長老が生涯400頭くらいを仕留めた話、戦前のエトロフ島でのヒグマや当時の様子など。読んでいるとヒグマのパワーと恐ろしさを改めて感じた。一番いいには共生できることだろうけどやっぱり猛獣だ、出てくれば仕留めるしかないと思う。ただ狩猟ができる人がどんどん減ってきていると聞く・・・図書館本2023/10/13
Shoji
35
勇猛果敢な明治の男が山に入り狩猟することの随想録である。現代ではクマが人間社会に出没し、人的被害も珍しいことでなくなった。アーバンベアと呼ぶらしい。専門家の話によると、悪いのはクマでなくヒトと言う。この本に書かれたクマはもちろんアーバンベアではない。純血野生種の熊だ。ヒトもクマも必死。狩猟を通して見つめるクマの生態、狩猟にまつわる民俗など、興味深く読めた。2023/07/22
ショア
34
約100年前の北海道の猟師によるヒグマとの戦いの手記。友人が目の前でヒグマに食い殺される様、罠を見破り草葉をかけて気づいていることをアピールするヒグマの賢さ、ヒグマの胃袋から出る被害者のそれなど、目の前で起きたことがリアルに描かれいるヒグマとのやり取りが臨場感緊張感たっぷり、戦前の択捉の様子や吹雪で登山隊が狂う様など読み物としても面白い。当時の写真が掲載されておりヒグマのでかいこと。イトウもでかい。巻末の服部文祥氏の解説というか自論も興味深い。2023/10/28
mahiro
26
ヒグマと戦うと言うより、大正期から昭和にかけて北海道の原野や森林を狩猟の為にかけ歩いた狩人の体験談。北海道生まれの私としては篠路や千歳付近など馴染みの土地や行った事のある土地が多く、開拓時代の様子やまだ普通に暮らしていたアイヌの人たちの様子が興味深かった。当時の北海道の大地の豊かな事…川を黒くして遡るサケや木の実でも取るようにいくらでも取れるきねずみやウサギ、すぐ側に当たり前にいるヒグマ…あまりにもためらいなく獲物を撃ち殺す描写に抵抗はあるが今近郊に現れるヒグマ問題とも重ねて考えさせられた。2023/02/02
禅
21
羆と至近距離で相対する恐怖。作者西村さんの体験記。他にもカモ猟やキツネ、カワウソ、ヤマメなど話も。2025/03/30