内容説明
一九六〇年代のハイキング雑誌『ハイカー』に連載された山のエッセイに、筆者がみずから書き下ろしたイラストを添えて再編集した、見て、読んで楽しい画文集。原著の持つ雰囲気を大切にし、ワンポイントの色使いが美しいイラストも忠実に復刻。山と日常との狭間を、温かな目で描いた72編のショートエッセイ。
目次
輪〓
消えた池
霜柱
冬眠
地図
吹雪
郵便配達夫
雪解けの音
過去
三つの色〔ほか〕
著者等紹介
串田孫一[クシダマゴイチ]
1915(大正4)年、東京生まれ。東京大学哲学科卒業。中学生のころより登山を始め、多くの山々に足跡を残す。1940(昭和15)年から上智大学予科などで教鞭を執り、東京外国語大学教授時代は山岳部部長も務めた。1958(昭和33)年、山の芸術誌『アルプ』を創刊し、1983(昭和58)年に300号で終刊するまで責任編集者を務めた。著作は膨大な量に上り、山岳文学、画集、小説、人生論、哲学書、翻訳など多岐にわたる。2005(平成17)年、89歳で逝去。哲学者、詩人、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shoji
46
名もない山をのんびりと出しゃばらずにただ歩くだけ。そんな山歩き中の随想を集めた本です。ひと昔前のアナログな時代に書かれたエッセイです。きっと、GPSもなければ、ゴアテックスなんて素材もない時代です。ゆえに、なんかいい味出してます。地に足をつけるとはこのことか。焦らずゆっくりと歩いて行こう。2021/01/26
naotan
8
山好きでなくても旅エッセイとして楽しめそうな一冊。自分が書いたのに解読困難な手帖の話が面白かった。2023/11/04
manabukimoto
3
山にまつわる随筆と挿画。 「霜柱」山を歩きながら形而上学的なことは考えてはならぬ、と戒めておきながら、1ページに3回も形而上学という言葉が出てくる。霜柱をただただ見るだけでいい。その儚さを味わうこと。そして「生まれ出て、しばらくするとはかなく消える私たちと同じ生命があるように見えるが、実はそういう生きものではないらしいということを決して忘れないようにすること」と串田先生は言う。手のひらで溶ける霜柱の冷たさから、形而上学を感じる。 概念の言語化、哲学者の書くエッセイは深い。 信濃大町 三俣山荘図書室蔵書2024/09/27