内容説明
得体の知れぬ大魚が釣り人を待ち受ける、底なし淵。ぬめぬめと光るマムシに守られた、尺イワナ湧く渓。昼寝の最中に現れては消える子どもたち。夕暮れの渓にきらめく蛍の乱舞と、かすかに聞こえる女の声。そして、遠野郷の奥深くに暮らす一家の明かされない謎。岩手の渓流で、釣り人が体験した奇妙な出来事の数々を、みずみずしい筆致で綴った傑作エッセイ集。巻頭には、夢枕獏氏が特別に序文を寄せている。
目次
序文 夢枕獏
罠
雨っこの渓
イワナのふるさと
ぶな虫
蛍火
ザシキワラシ
遠野郷附馬牛
マムシ
下嵐江の山人
ヤマセミ
カワシンジュガイ
隠れイワナ
野辺送り
冬漁
底なし淵
著者等紹介
村田久[ムラタヒサシ]
1942年、北海道生まれ。エッセイストとして活動するほか、アウトドアインストラクターとして講演やシンポジウムで幅広く活躍。著書に『家を抜け出し、川に佇つ』(平成22年度岩手県芸術選奨受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
79
著者が川釣りで体験した出来事をエッセイとしてまとめた本。川釣り、おそらくフライフィッシングという細い糸に毛鉤りを使った釣りでイワナやヤマメ釣りに使うやり方だ。わたしもやらせてもらったことがあるがまず糸がコントロールできないし、敏感な魚に完全にサトラレ難しかったことを思い出す。 そんな川釣りは山深く入ることも多いので様々な奇妙な出来事が起きるのかもしれない。山に関わる言い伝えや迷信というものも多くあるが、。昔の災難や事故の戒めのために言われていることも多いと思うと感じた。図書館本2023/12/02
HANA
65
岩手の渓流釣りの随筆集。のはずが読んでいくうちに、沢を遡っていくはずがどこか異界へと誘われて行くような心地がした。岩魚が虫を食べているだけなのにそれがとても恐ろしく感じたり、居なくなった釣り人を探しに豪雨の山中を辿る道行とか、現実がふいに反転する妙を存分に味合わせてくれる。特に「ザシキワラシ」と「遠野郷附馬牛」の二編は、どことなく『遠野物語』の中の世界へ連れていかれるような。その一方で居なくなりつつある動物への哀惜を込めた作品もあり、山中に生きる人の挽歌もありと、山と淵の魅力が詰め込まれておりました。2017/10/30
ばんだねいっぺい
25
渓流釣りに出かけて見聞きした話がたくさん。ちょっと不思議さや恐さもあり、人間の欲や業の深さ、情感も伝わる極上のエッセイ。これは、もっと、もっと読みたいなー。2017/08/24
ワッピー
23
農文協で立ち読みして衝動買い。山に入り、渓流に分け入って銀に輝く魚を釣り上げて食べるということにここまで魅力を感じている人の文章はやはり説得力があります。山の異界の中で出会う魚、動物、そして山人達との交流はやはり非日常の特別な感じがします。そして、山に生きる人たちも高年齢化が進み、その土地について深く知る人たちが次第に減ってくるという意味でも貴重さはひとしお。ワッピーは机上の山好きに過ぎませんが、こんな空気を吸ってみたいという憧れを再び思い出す名著でした。2019/01/24
pulpo8
21
通勤電車で読んで2週間強かかった。つまらないとかではなくて、物語化されていない実話ってこうだよなーって噛みしめる読書だった。実話怪談と思って読んだら、物凄く実話の部分が協調されていて…という期待外れ感。自然は大好きなんだけどな、文章で読むならもっと詩的なのがいいな。印象としては朴訥としすぎている。思うのだけど、著者は人んちに遠慮なく水を貰いに行く、ちょい喧嘩腰。釣り人ってなんか面倒だなー。ぶな虫♪ぶな虫♪大好きなヤマセミが何回か出てきて「おっ」。「マムシ」は確かに怖かった。それ以外は特に怪談とかでもない。2017/12/05
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