内容説明
人はさまざまな理由からひとりで山に向かう。しかし、単独行遭難における死亡・行方不明率は二人以上のパーティの事故の二倍以上という高い割合である。最悪の結果を招く遭難事故の多くは単独行者によるものだということは間違いない。本書は七件の遭難事例から、単独行のリスクを探り、防止策とセルフレスキューの可能性を検証する。実例から学ぶことで、遭難防止、安全登山を呼びかけ、大きな反響を呼んだシリーズの文庫版。
目次
奥秩父・唐松尾山 二〇〇八年五月
北海道・羅臼岳 二〇一一年六月二十二日
秩父・両神山 二〇一〇年八月
北アルプス・徳本峠 二〇〇七年八月
加越山地・白山 二〇一一年八月九日
北アルプス・奥穂高岳 二〇一一年十月
尾瀬・尾瀬ヶ原 二〇一〇年一月
単独行についての考察
文庫化にあたっての追記 山での行方不明事故。そのとき残された家族が直面する問題は
著者等紹介
羽根田治[ハネダオサム]
1961年、埼玉県生まれ。フリーライター。山岳遭難や登山技術の取材経験を重ね、山岳専門誌『山と溪谷』や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
登山の数ある遭難の中でも、一番危険性が高い単独行遭難に的を絞ったルポタージュ。自分の場合も他の人と休みが合う事が少なく基本的に山行は基本単独行が多い為、読みながら身に詰まらされる所が多々あった。やはり山は恐ろしい。本書に収められた原因は滑落と道迷いに大別できるが、どちらも単独行になると危険性が膨れ上がるのが特徴。実際自分の地元の里山みたいな所でも道に迷った人がいるし、別の山では滑落して亡くなった方がいる。今後はこれを参考に用心に用心を重ねたいけれども、でもやはり単独行にはそれ相応の魅力があるんだよなあ。2017/03/28
キムチ
42
8つの事例を検証。今回も当人のつぶやきの様に心象風景の展開がリアル。もっとも、何れも生還出来ているだけに気もち安らかに読めた。山野井さん言わく、通信機器を持たないでの行動でないと単独行とは言えない・・。山をやらない人には噴飯もののセリフに聞こえるだろう。加藤文太郎じゃないけれど、単独行といえば男の美学と感じる人もいるだろう。だがこの1冊を具に読むと、ほんのわずかな心のゆるみが、余裕のなさが、自然を甘く見る気持ちが。。など等やはり背後で魔物が潜んでいることが多いのだなと感じた。でも単独行は捨てがたい。2017/06/14
たち
35
単独で行く山登り、その魅力もわからないではありませんが、リスクの方が魅力を上回っているように思います。山登りをされる方は読んだほうがいい本です。2018/09/29
読特
30
遭難者の3人に1人、死者・行方不明者の半数以上。救助関係者の悲鳴「単独行はやめて欲しい」。残された家族には現実的な重荷も背負わせる。失踪宣言には7年、その間の税金は?社会保障は?7つの事例は読者としても重い責任を感じさせる。そこから何を学ぶのか。登山者個人が経験を活かすだけでは限界がある。もっとインフラ面でな対策が必要ではないか。見逃される登山届ポストであってはならない。GPSや通信インフラはもっと活かされなければいけない。大自然の中、守られていないことへのロマンはその程度で失うものではない。2020/11/11
hatayan
22
単独行だと、事故が起きたときに助かるかどうかは運に左右される。さらに、山で遭難した人の3分の1が単独行であり、数字だけ見ると明らかに危険である。 しかし、単独行にはパーティ山行では得られない、自分で登りきった満足感や自然と1対1で向かい合えるといった代えがたい魅力がある。 筆者は、周到に準備をしていながらも遭難者の心のどこかに隙があったと7つの事例から分析します。 自然を前に自分の力量を知り、冷静な判断を下せる理性を兼ね備えること。単独行は、かくも贅沢な趣味志向だったのかと意識を新たにせざるを得ません。2018/09/28
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