内容説明
1991年12月29日午後8時ころ、小笠原諸島沖で、暴風雨のために外洋ヨットレースに参加していた「たか号」が突然転覆してしまった。巨大な崩れ波だった。そして艇長の死。残された6名は、救命ボートに乗り移り、あてどない漂流がはじまる。しかし、クルーは衰弱して、次々に死んでしまう。27日間にわたるこの壮絶な闘いは、たった一人生きて還ってきた著者が、仲間たちのために書き残した鎮魂の記録である。
目次
第1部 蒼白き海―出航から転覆まで(救出;出航まで;出航;転覆)
第2部 彷徨えるいかだ―漂流二十七日(オレンジ色の世界;水葬;孤独の夜;羽田の灯)
第3部 心の漂流―癒される日々(天使からの手紙;救急病棟の人々;喪の家族を訪ねて)
著者等紹介
佐野三治[サノミハル]
1960年、横浜生まれ。高校卒業後カナダにわたり、約1年滞在する。ヨットを始めたのは20歳を過ぎてからで、1982年、加山雄三氏所有の「光進丸」にクルーとして乗り組んだこともある。現在、東京で会社員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
007 kazu
35
ヨットの転覆事故からの文字通り一人のみの生還譚。鳥の生肉を食べながら孤独で生きながらえた著者。既に多くの人には忘却の彼方の事故であろうが、本という形で今なお、読めるのはありがたいこと。転覆後、ラフトという極狭の空間で6人で一緒にいるも一人づつなくなり、水葬に付していく様は想像するだけで恐ろしい。特に二人きりになってから最後の一人が亡くなったときはどんな心境なのか? 自分であれば、最後の一人になる前に死んでしまいたいだろうな。(続く)2023/10/08
Tαkαo Sαito
31
行きつけの飲み屋のマスターにお勧めされた本。この事故の後に生まれので恥ずかしながら知りませんでした。淡々と当時を回顧し、文章に起こしているのが余計に凄まじく、本当の意味で佐野さん本人しか分かり得ない体験なんだと感じた。途中、読んでいて辛くなるような描写が多々あるが、それもこれも自分が今を生きられているからこそ感じる感覚なのだと気づかせてくれる素晴らしい本だった。後日飲み屋に行って、マスターに読んだ感想とお礼を伝えに行きたい2025/01/19
つみかた
28
「たか号」が出航するまでの準備に追われる様子は、業務でプロジェクトを管理するものとしては読んでいられない位にハラハラする。 「佐野さんがなぜ生き残ったのか」という論点も興味深いが、それよりも本書のような失敗から何を学ぶかがとても大切だと、改めて感じた。2018/03/19
yokmin
27
「孤島の祈り」イザベル・オティシエ著 の後に読んだので、複雑な気持ちもある。 なぜ、一人だけ生き残ることができたのか? 筆者が収容された日医大病院の医師いわく「全身の各機能の衰弱がバランスよく起こっていたのであろう。心臓とか、腎臓とか、どこかひとつの機能が他より異常に落ち込んでいたら助からなかったと思う」 それにしても他の方々が苦しまずに、静かに亡くなっていったのが、せめてもの救い。2020/12/18
金吾
26
極限状態のものすごい体験談です。一人になった孤独は考えられない位きついだろうと感じました。2024/01/14