内容説明
雑誌『旅』の編集者として、日本各地の山・谷・湯・岬・海・湖などを丹念に歩いた著者による紀行文集の傑作で、往時、「秘境ブーム」を巻き起こした。紀行文の名手が紡ぎだす文章は、ときに鋭く、ときにやさしい。高度経済成長の陰で失われていった日本の風景を描写した、昭和三十年代の旅の記録として貴重である。
目次
山
谷
湯
岬
海
湖
著者等紹介
岡田喜秋[オカダキシュウ]
1926(大正15)年、東京生まれ。作家。旧制松本高校を経て、1947(昭和22)年、東北大学経済学部卒業。日本交通公社に入社し、1959(昭和34)年より12年間、雑誌『旅』編集長を務める。雑誌編集者時代から日本各地を取材して、数多くの紀行文を発表。日本交通公社退職後は、横浜商科大学教授として、観光学の構築に努める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
61
昭和30年代の秘境紀行。20箇所のほぼ全箇所訪れたことがあるが30年の歳月の長さはやはり侮れないんだな。どこもかしこも自分の記憶や印象とは全く異なる「秘境」だった。2015/12/03
100
52
昭和半ばのハードコア一人旅。 田舎人は民謡に声を張り、都会人は思索を排除する肉体の疲労を望み、人夫は人を助け親切にし、助けに感謝する。灯台守は職業を愛し、警官は平和に安堵する。時には観光地の凋落を嘆き、時に地球に興奮する。 目的地ばかりではない旅の楽しみ方の指南書。 2021/06/27
こぺたろう
13
一年くらい掛けて読了。あまりにもゆっくり読みすぎて、最初の方は内容を全く覚えていないので、読んだことにしたと言ったほうが正しいかもしれません。でも気分良く読んだのは確かです。話は変わって、この手の紀行文で、富山県の小川温泉元湯「おがわ」を訪れたものがあるのですが、それがどの本だったのか思い出せず、ずっと気になってます。2020/01/21
ひねもすのたり
10
【Kindle Unlimited】著者二冊目。 昭和30年前後の日本を旅した紀行文です。 奥信州、椎葉、羊蹄山、足摺岬、酸ヶ湯、夏油・・・今では観光地とされている地域ですが、交通網の発達していない昭和30年代初頭は日本の秘境と言って憚らない場所だったようです。 現代の紀行文とは異なりグルメ情報はありませんが、そこではどのような人たちがどのような暮らしをしているのかが書かれています。 高度成長を挟んでこれらの地域は何を得て何を失ったのか? つげ義春の旅モノや宮本常一が好きな方ならハマると思います。★4.52019/09/16
hitsuji023
9
ドキュメンタリー調とでも言うような文章で派手さはないが引き込まれる。群馬県の鬼石をチベットに例える所など、そんな発想は出てこないだけに面白い。 あとここに出てくる乳頭温泉郷、その内の一つ黒湯、田沢湖など、この本で書かれている昭和30年代の印象が、私がごく最近旅行に行った時の印象と変わらなかった。そこだけ時間が止まっているのだろうか。 この著者は地方の名勝の地であっても見るほどでもないと正直に書くところがいい。それは、例えるなら一般の人が感じる「名物に旨いものなし」の感覚に近い。そんな所に共感した。 2017/11/29