目次
序論 オスマン朝史研究と新たな「地中海世界」像
第1部 十六世紀後半におけるオスマン朝の食糧事情とイスタンブル(「食糧不足の時代」とオスマン朝の食糧事情;イスタンブルへの人口流入とその対応策)
第2部 オスマン朝の穀物流通システムと東地中海世界における「穀物争奪戦」(イスタンブルにおける食糧不足と穀物供給;穀物問題にみるオスマン朝と地中海世界)
結論 つながる地中海世界、隔たる地中海世界
著者等紹介
澤井一彰[サワイカズアキ]
1976年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、関西大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
6
16世紀のオスマン帝国の食糧供給事情について、首都イスタンブルを中心に考察した一冊。ブローデルの『地中海』で示された枠組を援用しながらも、かの大著で描かれなかった当時の東地中海世界をオスマン語史料を駆使して論じている。慢性的な食糧不足解消に悩まされながらも、ついに暴動や飢饉を起こさなかったのは、オスマン帝国の長きにわたる繁栄を支えた官僚組織の底力が窺えて興味深い。問題の根本が首都への人口の過剰流入なあたりは、江戸期の日本とも被る印象を受けた。2018/04/18
人生ゴルディアス
5
巻末に度量衡が乗ってて素晴らしい。基本的にはブローデルが『地中海』で語らなかったことである、16世紀中盤から後半のオスマンの食糧事情を記している。慢性的に食糧不足でしょっちゅう危機に陥りつつ、餓死者が多発したり一揆が起こるような騒ぎはついにおこらなかった、となって、官僚制度のすごさよ。不作の原因は当時地球が寒冷期で、金角湾が凍り付いたりとか、後はとにかく人口問題のようだ。また、海運による穀物供給の密輸や不正輸送の具体的な手口などの解説も。冬に船を出さないことは知ってたけど、具体的な日付も記してあった。良書2017/01/14
Cebecibaşı
1
「小麦」という一つの物品に着目してオスマン帝国とその周辺の国々がそれを巡ってどう動いたかを明らかにすることを目的とした研究。大枠はブローデルなどの既存の研究によりながら、当時のヨーロッパの大歴史家たちが参照できなかったオスマン語史料を用いて彼らの研究に欠けた部分をカバーしたもの。先行研究へのリスペクトと批判のバランスが良い良書。2017/07/20