出版社内容情報
古代地中海世界では、紀元前8世紀から紀元前5世紀にかけて卓越した文明が繁栄し、そこで達成された知的成果は、人類共通の文化遺産として、今日なお普遍的な価値を保ち続けている。
このような文明世界が成立し、さまざまな変容を伴いながらも長期にわたって独自の創造性を発揮することができた、その根本的な要因とは何だったのか。
個人と集団のアイデンティティに関わる文化的記憶こそがこの問題を検討するためのもっとも重要な鍵概念になるのではないかという見通しのもと、さまざまな文化的記憶を創出・強化した知の動態の解明に向けて進めてきた研究の成果を紹介する。
本書は、桜井万里子・師尾晶子編『古代地中海世界のダイナミズム―空間・ネットワーク・文化の交錯―』(山川出版社 2010年)の続編にあたり、この11年間に古代地中海世界の歴史学、考古学、美術史学などの諸分野において先端的な研究を蓄積してきた研究者が、関連するそれぞれの研究成果の一端を一般読者にも分かりやすい形で提示した。あらためて古代ギリシア、エジプト、ローマ世界の文化の奥深い魅力を味わっていただきたい。
内容説明
なぜ古代地中海世界は、独自の卓越した創造性を発揮することができたのだろうか。文明を創造し継承した知の伝達メカニズムを探る!
目次
「文化的記憶」とは何か
第1部 古代エジプトにおける王権・神殿と文化的記憶(ギザのスフィンクスの文化的記憶;古代エジプト王朝時代における「あるべき過去」とその媒体;ある古代エジプト王像に彫られた文様の記憶 ほか)
第2部 古代ギリシア世界における想起とアイデンティティ形成(僭主殺害者像とアテナイ民主政の文化的記憶;前六世紀と前五世紀のアテナイ芸術における女性、子ども、老人の聖域避難の図像;古典期アテナイにおける喧騒の記憶とその共有 ほか)
第3部 古代ローマ社会における記憶の保存・伝達と継承(キケロの書簡にみるアテナイの哲学学校と古代ローマの別荘;ローマ帝国における皇帝イメージの検閲・伝達・記憶;塗り重ねられるギルドー「反乱」の記憶 ほか)
著者等紹介
周藤芳幸[ストウヨシユキ]
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、名古屋大学大学院人文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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