内容説明
どのような情況で人喰いの語りは創られたのか。インフォーマントの役割に着目し大航海時代から現代まで、スマトラを舞台に異文化接触と共存への道筋を解き明かす。
目次
第1章 人喰い話の歴史
第2章 大航海時代と「人喰い族」
第3章 人喰い風聞と共存する交易者
第4章 ヨーロッパ人とインフォーマントが創る食人文化
第5章 人喰い伝説の復活
第6章 語りと事実の媒介者
著者等紹介
弘末雅士[ヒロスエマサシ]
1952年生まれ。オーストラリア国立大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。現在、立教大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
31
人喰いは集団生活においての信頼性の喪失などによってタブーとされると同時にクールー病、プリオン病などの発症リスクもあり、結果として人間の生存に対するとリスクも高い。にも関わらず、なぜ、人喰いの話はあるのか?その答えとして集団社会における仮想敵の想定することによって外部が仕掛けようとする戦いを退けるという情報伝達戦を導き出している。また、人喰いの生贄が尊厳を持つという逸話は辱めや不名誉ではないという敵への配慮も窺える。ヨーロッパ啓蒙主義の「人喰いは非人道的だ」という批判に対してのサドの反論が如何にもサドらしい2016/02/28
志村真幸
4
著者は東南アジア史の専門家として、とくに北スマトラのバタック社会について研究してきた人物。同地でしばしば人食いの語り/記録が見られることから関心をもち、このような一冊になったのだという。 人食いが事実かどうかを追った本ではない。人食いの残虐性やグロテスクさに迫ったものでもない。むしろ、歴史的・社会的な文脈において人食いがどのような機能をもってきたかが分析されている。しかも、単純に西洋世界と現地民の関係というのではなく、スマトラ社会の多層性にまで踏みこみ、なぜ人食いの語りが生成するのか解き明かしている。2019/07/31
トーマ
4
図書館本。 大航海時代から始まる人喰いの記述や噂話が書かれている本です。地名や人名、民族や国の歴史などが次々と出てきて、人喰い以外の情報量の方が多い本書。記述の信憑性は著者も疑っていて、直接的に人喰いを見たという記述はないと言ってよい。本書は歴史からみた人喰いを語っていて、「表」ばかり見せられているように感じる。実際はここに書かれているよりも酷いことが世界には溢れていると思うし、それが表舞台に出ることはないのだと思う。ただ気持ち悪いで完結させずに、しっかりと理解してから気持ち悪いと感じたいから読んでみた。2017/02/07
takao
3
ふむ2023/06/27
刳森伸一
3
人喰いに関する言説が仮想敵の必要性などのためにインフォーマント(情報提供者)側によって形成されるという主張は比較的説得力があると思うが、「人喰いの社会史」というタイトルにしては、「人喰い」に直接関係しない箇所なども多く、少し冗長な気がする。2015/04/23