出版社内容情報
幕末維新期の大きな変革の時代の中、国家建設のために生涯を奉げた岩倉具視。明治維新の立役者、民主化を抑制する保守派代表、といった彼に対する賛否両論ある評価を再検討しながら、政治家岩倉の等身大の姿を描く。
坂本 一登[サカモトカズト]
著・文・その他
内容説明
岩倉具視は、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允とならぶ、明治維新の重要人物として名高い。しかし、岩倉の本格的な評伝は意外なほど少ない。またその評価も定まらず、戦前はなかば神格化され、逆に戦後は保守派の代表として否定的な文脈で語られることが多い。そうした正反対の評価を再検討しながら、幕末維新期の急激な変化に翻弄されつつ、なお必死に新しい日本の形を模索した岩倉の等身大の姿を描きたい。
目次
時代の変化の鏡として
1 朝廷政治への登場
2 王政復古への道
3 新政府の右大臣
4 政府の重鎮として
政治家岩倉
著者等紹介
坂本一登[サカモトカズト]
1956年生まれ。東京都立大学大学院博士課程満期退学。専攻、日本政治史。現在、國學院大學法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
3
幕末維新期のおける「政治家」岩倉具視の姿を先行研究に依拠しつつコンパクトに纏めた評伝。 信念を持ちつつ柔軟かつ大胆な行動を厭わない、その一方で分裂気味の明治政府内で粘り強く調停にあたる二つの側面を持つ岩倉の姿を描き出す。新政府樹立間もない頃に述べた「古の良法美制と雖、今日適せざるものは、断然と之を廃停して拘泥の陋習を破る可し」という岩倉の言葉は現実的な見地に立ち、漸進的な改革を志向する維新政府首脳部の面々と軌を一にしていたと思う。維新後はイマイチぱっとしないが岩倉は「動乱の政治家」だったのかもしれない。2019/10/12
rbyawa
1
j023、なにかを見てないと思ったら「全く信用ならないが三条実美のことは裏切らない」って言われてた辺り…えーと、政界への復帰後の辺りか、まあその辺だと本もあるし、なんなら通史でも語られてるしね。三条さん以外の公家がまともに思えないのは私もかな…あとあれ、失脚時代に支えてくれたのが新蔵人と呼ばれていた地位の一番低い人たちだったんですね…。その手の層に人気ある人ってのは真面目に能力も人柄もいいものだよね…普段見る魑魅魍魎扱いの本とはだいぶ趣が違って「岩倉具視以外は全員どこかおかしい」と見るのが無難な気すら…。2019/02/21
samandabadra
0
500円札の人。其れだけしか知らなかったが、江戸末期や、明治時代にどのような活躍をしたかを知る。昭和の時代の中期ごろ、つまり20-40年代には評価が高くてもいいような人に見える。今はどうだろうか?とまれ、公家の出身の方でこれだけ、明治時代に時代の中心に長くいた方も珍しい。明治16年に59歳で亡くなったのを初めて知ったが、この頃ならそれほど「早い死」でもなかったのだろうか?2023/07/24
うどんさん
0
岩倉具視は維新の功労者として名高いが、岩倉使節団を除くと具体的な事績への関与で言及される機会は一般向けでは少ない。著者は岩倉を西洋列強に対抗しうる挙国一致体制の構築に動いた「漸進主義」者であり「調停者」として描き出し、攘夷論よりは公武合体論に近しかった岩倉の立場や、維新前後という権力状況の不安定な時期だからこそ「調停者」岩倉がハブとして機能したという点などを指摘し評価する。維新前の謹慎期間の長い岩倉がなぜ評価されたのかもう少し説明が欲しいと感じた。(正当化のため小御所会議での「岩倉の一喝」神話が誕生?)2020/11/21