内容説明
「犬を愛護した五代将軍徳川綱吉」の政治は、「生類憐み」として知られる。のちの世からは犬を重んじ人命を軽視した異常な政策のようにみえるが、その根幹には徳川王権を神聖化するために、血の穢れや死穢を極端に忌避しようとした意図があったのではないか。百花繚乱の江戸文化がきらめく元禄時代に対して、天下人たる五代将軍はどのように向きあおうとしたのか。本書では、綱吉自身の目線から、その時代像を掘りさげていく。
目次
徳川綱吉と元禄時代
1 将軍就任前(戌年生まれの家光四男;綱吉の家族 ほか)
2 五代将軍への就任(将軍宣下;宮将軍擁立説 ほか)
3 元禄・宝永期の綱吉政治(徳松の死と服忌令の制定;生類憐みの政治 ほか)
4 徳川王権への道(ケンペルとの問答;儒学への傾倒 ほか)
著者等紹介
福田千鶴[フクダチズル]
1961年生まれ。九州大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程中途退学。博士(文学、九州大学)。専攻は日本近世史。現在、九州産業大学国際文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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k5
56
江戸力強化月間11。最近、綱吉関係の本を読むことが多かったので、勢いでこちらも。お七火事、堀田正俊刺殺事件、生類憐みの令、松の廊下事件と話題の多い綱吉時代ですが、コンパクトにまとめられており読みやすいです。この本のポイントは浅野長矩の切腹も江戸城に穢れを持ち込んだから、とするように服忌令を中心とする穢れ思想ですかね。やはり江戸の思想史は勉強しないといけないかも。2022/06/11
鐵太郎
10
この本は、本と言うよりも冊子、パンフレット程度のものですが、面白い視点で綱吉という人物を見直しています。古いイメージに疑問を呈して、教養豊かな文人政治家の施政を見直してはいるものの、この人の人物像を、塚本学(つかもの・まなぶ 日本の歴史学者 1927/4/14~)氏の評価、「日本社会の文明を推進した理想主義者であるが、小心の専制君主」「偏執狂(パラノイア)的性格がうかがわれる」にそった見解で、この多芸で死ぬまでわが正義を信じていた人物を論じています。こんなに薄いのに、考える事がたくさんできた本でした。2010/09/09
ひでき
6
「犬公方」「マザコン」等、綱吉の評価は低い。しかし、学会での評価はかなり前からそれ以前の血で血を洗う戦国の世の中から脱しきれなかった江戸幕府を儒教思想により本当の平和を実現した名君と評される。生類憐みの令は人間の子供も対象で、それ以前の農民は戦で殺されてもしょうがないものとされていた。 彼を貶めたの日本人の好きな水戸のご老公様。彼は辻斬りの好きな血の気の多い武闘派。将軍家が水戸家になる可能性があったのに綱吉に横取りされたこともあり、綱吉のことを悪く言い、それが残ってしまった。歴史は日々変わる。2012/02/04
もりり
3
ずっと気になっていた綱吉の通史がさらーっと読めた!薄いのに情報量多くて、頭が整理された。将軍として正当化しようとしている綱吉が可愛い。柳沢騒動っていうのが気になる。2017/08/09
うさを
3
歌も作るし書画もたしなむ。能のシテをつとめたり、儒学の講義をしたりもした。多芸な将軍で、その教養を基礎に、仁政を敷こうと努力をした。生類に関する一連の政策も、その一環だったようだ。また、そうした理想主義的な政治理念と表裏に思えてくるのが、血の穢れを極端に嫌った、という事実。赤穂事件をめぐる呵責ない裁定は、このことが影響しているのではないか、と書かれていた。こうみてくると、吉宗は綱吉を尊敬していたというけれど、二人の好みや政治手法は正反対のものに思える。経済政策について、もう少し読みたかった。2013/05/04
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